平安〜戦国期の熊本を治めた豪族菊池氏に由来する太刀が666年ぶりに福島から里帰りし、今月、玉名市の市立歴史博物館の企画展「福島の菊池一 族」で初公開された。同館は「福島に移り住んだ子孫が戦乱を乗り越えて伝えてきた史料から、菊池氏の新たな一面を知ってほしい」と話している。
博物館によると、菊池氏は1070年に熊本・菊池地方に入った則隆を初代とし、それから戦国時代までの約500年間、一帯を統治した。
その間、14代武士(たけひと)の息子武頼が1349年に熊本を離れ、89年に後亀山天皇の命を受けて現在の福島県がある陸奥に移った。今回展示される39点の史料には、このとき武頼が陸奥に伝えた初代則隆のものとされる太刀が含まれている。
菊池氏の城は1585年、伊達政宗軍に火を放たれて陥落。逃げ延びた子孫は「たとえ農民となっても臣下となるべからず」という家訓を守り、他の武将に仕えずに門外不出で史料を守ってきた。1868年の戊辰戦争では、官軍から史料を略奪される悲劇にも見舞われたという。
企画展は、玉名市出身の男性が歴史を研究する中で、史料を保管する菊池氏の子孫紺野健二さん(67)=福島県郡山市=と知り合い実現した。
博物館は、菊池氏の苦難の歴史を身近に感じてもらおうと、俳優斎藤工さんが朗読した約20分間のスマートフォン向け音声案内を、来場者向けに製作。会場には、菊池氏が活躍した平安時代を書でイメージした現代美術の作品約30点も合わせて展示している。
同館職員の村上晶子さんは「福島の菊池一族が、熊本を遠く離れても先祖への誇りを大切にしてきたことが感じられます」と多数の来場を呼び掛けている。
企画展は来年2月7日まで。
=2015/11/06付 西日本新聞朝刊=