青森県深浦町で1947年に見つかり、県立郷土館(青森市)に収蔵されていた「アオモリゾウの象牙の一片」が、実際は県内では初の発見となる水生哺乳類「カイギュウ」の化石だと分かった。県立郷土館が9日、明らかにした。東北でカイギュウの化石が確認されるのは山形、福島両県に次いで3例目。北東北では初めて。
カイギュウは、水生の草食性ほ乳類の総称。見た目はクジラに似ているが、分類上はゾウに近く、ジュゴンやマナティーと同類という。
ゾウを研究する島口天(たかし)副館長が収蔵品の整理中、「明らかに象牙ではない」と感じ今年1月、断面の最大幅が約6センチ、長さが約14センチの「象牙」の調査を始めた。象牙であれば本来は断面が円形で中心部に空洞があるのに対し、楕円(だえん)形で穴もなかった。
調査を続けた結果、骨密度の高さや全体がわずかに湾曲していること、発掘場所の周辺の地層の状況などから、約300万年前に寒冷地に生息したカイギュウ(ヒドロダマリス属)の肋骨(ろっこつ)の一部と判明。未成熟時に見られる海綿質の部分があり、最大7メートルほどの子どもと推測される。
記者発表した島口副館長は「今後、全身骨格などが発見されれば『ヤマガタカイギュウ』などのように地域の名前が付く可能性もある。期待しながら裏付け調査を続けたい」と話した。