AbemaTVって広告媒体としてどうなの?

藤田氏が明かす、AbemaTVの現状

 「AbemaTV Ads Conference 2019」で最初に登壇したのは、サイバーエージェントの代表取締役社長であり、AbemaTVの代表取締役社長を兼任している藤田晋氏だ。

株式会社サイバーエージェント 代表取締役社長
株式会社AbemaTV 代表取締役社長 藤田 晋氏(写真提供:AbemaTV)

 昨年開催された「AbemaTV Conference 2018」の際は、簡単な挨拶と意気込みにとどまっていたが、今回の発表会では社長自らサービスの現状と今後の方針について語った。

 まず明らかになったのはアプリDL(ダウンロード)数の推移。2016年の4月11日に開局して以降順調にDL数は伸び、2019年4月30日には4,000万DLを突破した。また、アプリに欠かせない指標であるWAU(週間アクティブユーザー)、MAU(月間アクティブユーザー)も着実に伸びており、同社が掲げるWAUの目標1,000万に目前というところまで来ている(カンファレンス後、6月3日(月)から2019年6月9日(日)のWAUが1,000万を突破した)。

 続いて、藤田氏はユーザー属性について紹介した。下記図では18歳以下は含まれていないが、18-34歳が半数以上を占めており、若年層のユーザーが多いのがわかる。

 そして、売上の推移も明らかにした。AbemaTVには多額の投資をしているが、藤田氏は「赤字だが売上は着々と伸びている」とした。

広告主が安心して出せる広告商品を

 続いて藤田氏は、AbemaTVの直近の取り組みを振り返った。中でも広告に関連したものとして取り上げたのが、2018年10月に発表した電通、博報堂DYメディアパートナーズとの資本業務提携である。このタイミングで提携した理由について、藤田氏は以下のように話している。

 「これまでも動画サービスにいろんな企業がチャレンジして多額の投資をするものの、なかなかな形にならず撤退するということが過去にも相次いでいたので、ある程度の成功をもって無視できない存在になってから協力をしていただいたほうが本腰を入れてもらえると、タイミングを待ってお声がけしました」(藤田氏)

 そして、藤田氏は今後の方針を語る中で、「インターネット広告における1番クリティカルな問題」としてブランドセーフティに関する問題を挙げた。同氏は「CGM(Consumer Generated Media)が大型の広告商品を作り上げているので、コンテンツがコントロールできない状態で掲載することになる。広告主はブランド毀損のリスクをコントロールできないため、トライアルでの出稿にとどまってしまっている」と、現状に対する課題感を示した。そして、以下の言葉で講演を締めくくった。

 「なんとか広告主が安心して出せる広告商品を作りたいという思いもあって、このようなビジネスを始めています。赤字赤字と言われていますが、何を言われてもとにかく最後までやり切ろうと思っているので、ご協力のほどよろしくお願いいたします」(藤田氏)

AbemaTV Ads、6つの事例を一気に公開

 続いて登壇したのは、AbemaTVの広告本部 本部長を務める山田陸氏。同氏は、「『AbemaTV Ads』の活用事例と成長戦略」と題した講演を行った。

株式会社サイバーエージェント 取締役 株式会社AbemaTV 広告本部 本部長 山田 陸氏
株式会社サイバーエージェント 取締役
株式会社AbemaTV 広告本部 本部長 山田 陸氏(写真提供:AbemaTV)

 「AbemaTV Ads」は大きく「CM配信」と「タイアップ企画」の2つに分かれており、最近ではオープニングロゴや提供クレジットなどが掲出できるメニューも存在する。そして、「ブランドセーフティ」「若年層ユーザーが多い」「話題作りに強い」という3つの特長を武器に、ナショナルクライアントを中心に広告売上、出稿ブランド数および社数、出稿単価を伸ばしてきた。

 では、出稿する広告主はどのような活用ができるのだろうか。山田氏は既に結果の出ている事例を9つ紹介したが、本記事ではその中から注目すべきものを6つピックアップする。

ケース1:テレビとの相乗効果(1)若年層リーチを最大化したい

 テレビCM+AbemaTV Adsを同時に出稿することで、テレビのみ出稿時より約36%少ないコストで同等のリーチに到達できた。

ケース2:テレビとの相乗効果(2)態度変容効果を最大化したい

 テレビCMに3~4回接触する場合、AbemaTV Adsでの接触を1回混ぜると効率(商品好意と利用意向のブランドリフト)が上がった。

ケース3:ファンの多い番組を活用して自分ごと化を促進したい

 恋愛リアリティーショーの出演者を起用し、オリジナル長尺CMを制作。これにより、番組のファンにブランドを自分ごと化させることに成功した。

ケース4:短期間でリーチを最大化させたい

 「Abemaビデオ」(オンデマンド配信)のプレロール広告のファーストimpを1週間ジャック。すると同じ金額をオールリーチで配信するよりも1.6倍のリーチが獲得できた。

 また、令和のカウントダウンムービーの後に1社限定で最初のCM配信を可能にするなど、短期間でリーチを最大化するメニュー開発にも取り組んでいる。

ケース5:相性のいい番組に協賛/コラボしてブランドイメージを上げたい

 「1ページの恋」というオリジナルドラマの出演者を起用し、ドラマ内での番宣と提供読みを行うという取り組みを行った。これにより、「信頼できる」「話題の」といったブランドイメージが向上した。

ケース6:来店促進につなげたい

 とある衣料品チェーンで来店促進を目的とした広告をAbemaTV Adsで配信。その後サイバーエージェントの位置情報計測ツール「AIRTRACK」で実施した調査結果で、広告接触者のほうが配信期間後の来店率が大きく向上していた。

今後はテレビ×デジタルを良いとこどりしたプロダクトに

 山田氏はこれらの事例以外に、今後商品化を予定しているインタラクティブアドについても紹介した。CM上で商品の詳細情報が閲覧できたり、サンプリングやモニター募集に応募できたりする機能を実装する予定だという。

 既に様々な形で活用が進んでいるAbemaTV Ads。講演の終盤、山田氏は今後の展望について以下のようにまとめた。

1.ブランドセーフティの徹底
 ブランドセーフティは他メディアと比較して大きな差別化ポイントなので、引き続き注力していきたい。

2.リーチの最大化

 地上波テレビに比べればまだまだの規模だが、順調に伸びているので、単体でも十分にリーチできるくらいの媒体にする。

3.ターゲティング幅/運用幅の強化

 各社PMPとの連携も進めており、純広告以外の販売も強化。また、ターゲティングの運用幅も持たせた設計にする。

4.面白い×広告の実現
 
広告=邪魔なものではなく、コンテンツとして楽しめる広告を実現したい。CMひとつにしてもオリジナルで制作し、ユーザーに面白いと思っていただける事例が増えている。

 そして、最後に山田氏は「直近1~2年でこれら4つのことを実現してテレビとデジタルの良いとこどりしたプロダクトに成長させていきたい」と語り、講演を終えた。

ネスレ日本が語る、AbemaTVの持つパワー

 「AbemaTV Conference 2019」の最後には、ネスレ日本の村岡慎太郎氏、サイバーエージェントの金子雅也氏、AbemaTVの古賀誠隆氏の3名による事例紹介が行われた。

左:株式会社AbemaTV 広告本部 コンテンツプランニング局 マネージャー 古賀 誠隆氏
中央:ネスレ日本株式会社 マーケティング&コミュニケーションズ本部
媒体統括部 媒体統轄室 マネージャー 村岡 慎太郎 氏
右:株式会社サイバーエージェント インターネット広告事業本部
ブランドクリエイティブ部門 AbemaTV局 局長 金子 雅也氏
(写真提供:AbemaTV)

 大ヒット映画のスピンオフムービー「カメラを止めるな!スピンオフ『ハリウッド大作戦!』」を制作し、AbemaTVに放映したネスレ日本だが、なぜこのような施策を行ったのか。村岡氏はこの質問に対し「コンテンツを軸としたサービス理解」が目的だったと語る。

 「弊社が提供しているネスカフェバリスタとネスカフェアンバサダーという製品があるのですが、僕らが意図している商品理解につながっていなかったんです。そのため、『カメラを止めるな!』という強いコンテンツを通して、両製品の違いを明確に伝えたいと思い、実施することにしました」(村岡氏)

 とはいえ、いきなりこのような大きな取り組みを行うのは難しいと考えた村岡氏は、トライアルとしてキットカットの受験キャンペーンにAbemaTV Adsの長尺オリジナルCMを活用。その結果、ティーンを中心としたエンゲージメントも高まり、店頭での週間販売数も3倍くらいになったという。

 では、今回の施策のポイントはどこにあったのか。金子氏は「話題化」「本編視聴の最大化」「広告効果の最大化」の3つを重視して施策を考えたという。

 話題化・本編視聴の最大化という観点に関しては、番組を放送する日の前日が日本アカデミー賞の授賞式、さらに日本テレビの「金曜ロードSHOW!」で放送された「カメラを止めるな!」の後にも再放送できたことが大きく寄与した。

カメラを止めるな!スピンオフ『ハリウッド大作戦!』予告編

 そして、広告効果の最大化に関しては、本編とシームレスなインフォマーシャルを制作。村岡氏が「弊社のトンマナで行くと難しい」と語るほどかなり攻めたクリエイティブになっていたが、「カメラを止めるな!」のキャストを起用し、放送されるコンテンツに合わせた内容にすることで視聴者に響く内容にできたという。

AbemaTVでCMを出す最大のメリットとは?

 ここで、CMによって得られた成果として古賀氏はCM中のコメント総数が8万件を超えた点を挙げた。そして、ここに対し村岡氏は「AbemaTVでCMを実施する最大のメリット」だと語った。

 「最近地上波でもドラマの出演者がCMやミニ番組、オリジナル番組に出てくるということはありますが、最大の悩みとしてあの瞬間の効果がわからないというのがあります。要するにテレビCMの結果はすぐわからないし、早くても2、3ヵ月後になってしまう。でもAbemaTVだとタイムリーにコメントが入ってくるのでキャンペーン後すぐに次の一手が取れます」(村岡氏)

 コメントの内容もポジティブなものが多く、「ネスカフェバリスタとネスカフェアンバサダーの違いが理解してもらえた印象を持った」と村岡氏は評価し、今後のAbemaTV Adsの活用についても「若年層に強いので、その層に伝えていきたいメッセージがあるときは、ぜひ協力いただきたい」と語った。

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