AI地震予測が示した「大地震」最警戒エリア

2013年以降、測量学の世界的権威である村井俊治・東大名誉教授がメールマガジンなどで発表し続けてきた『MEGA地震予測』は、この3月からAI(人工知能)による予測を実用化させている。現在運用中のAI地震予測では、全国を30地区に分けて予測を行なっている。

2018年2月4日~10日の電子基準点の変動(上下動、水平方向の動きなど)をもとに、AIが過去12年間のデータと比較して地震の発生リスクを算出。警戒レベルごとに6段階に分けて評価した。別掲のマップにある円で示されない陸地部分はすべて「レベル0」となっている。円内に示したのは、各地区の代表的な電子基準点の名前で、JESEA(村井氏が会長を務める民間会社=地震科学探査機構)ではこれを30の地区の呼称とした。

「AIには全ての電子基準点のデータを12年分記憶させていますが、現状の能力では全国1300か所の分析は間に合わない。そのため、日本全域を半径約150キロ圏内の30地区に分け、各地区内から抽出した6つの電子基準点の動きを予測に用いています」(村井氏)

AIが予測するのは「震度4以上の地震が半年以内に発生するリスク」だ。警戒レベルを0~5の6段階評価で分析する。国土地理院から発表された2月10日までの1週間のデータを元にAI予測を行なった結果が、別掲のマップだ。

「予測対象は震度4以上ですが、最警戒レベル5とその次のレベル4は、震度5以上の大地震になる可能性が高いゾーンと言える」(村井氏)

「レベル5」は、「東北から北関東の太平洋側地域」だった。青森県の一部に加え、岩手県、宮城県、福島県、栃木県、茨城県の全域が含まれる。

「レベル4」は、三宅島を含む「伊豆諸島」、そして和歌山県、香川県、徳島県を含む「南海地方」だ。

特に南海地方は、政府の地震調査委員会がかねてより「マグニチュード8~9クラスの大地震」のリスクをアナウンスしてきた南海トラフ地震の影響が懸念される地域だ。同委員会ではこれまで、その発生確率を「70%程度」としてきたが、今年2月9日には「70~80%」と“上方修正”している。

鹿児島県、熊本県を含む「九州南部」もレベル4を示した。2016年の熊本大地震発生以降、依然として火山活動が活発な地域である。

「レベル4、5」の地域は、かねてより地震の危険性が指摘されてきたエリアがほとんどだが、「レベル3」には、これまで村井氏の予測で警戒ゾーンとして挙げられることが少なかった福岡県、長崎県などの「九州北部」が示された。村井氏が指摘する「AIによる予測の広がり」を示す地域である。

その他、東京都、神奈川県、千葉県を含む「首都圏」や、昨年6月に震度5強を観測した長野県、2004年の大震災以降、震度5弱以上の余震を18回繰り返してきた新潟県なども「レベル3」エリアに含まれる。

◆「AI任せ」にできない部分も

ただし、「AI予測にはまだまだ課題も多い」と村井氏はいう。3月1日に沖縄・西表島で震度5弱の地震が発生したが、AI予測で同地域は「レベル0」となっていた。

「1月27日までの電子基準点データを元にしたAI予測では、西表島を含むエリアはレベル2でした。しかしそれ以降(2月10日までの2週間)のデータを元にAIが予測するとレベル0となった。毎週、新たなデータが更新されていくなかで、そうした変動をどう判断していくかは、まだAI任せにはできない部分がありそうです」(村井氏)

村井氏は今後、運用を重ねて精度を高めつつ、AI地震予測を定期的に公表していく予定だという。

「AI予測を含め、我々の地震予測は発展途上です。そのことを踏まえていただいたうえでお願いしたいのは“当たったか否か”だけに注目せず、予測を防災に役立ててほしいということです。

常に警戒レベルをチェックするなど情報入手を怠らないことが、防災意識を高める何よりの助けになるはずです」

「地震予知」のさらなる前進を、地震大国・日本に住む多くの人々が願っている。

●JESEAでは毎週水曜日にスマホ・PC用ウェブサービス「MEGA地震予測」(月額378円)で情報提供している。詳しくはhttp://www.jesea.co.jp

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