ATMは、どこに行くんだろう 「削減」図るメガバンク、「強化」目指すコンビニ…環境変化にどう対応

ATM(現金自動預払機)をめぐり、銀行の対応が割れている。一方は「相互開放」による削減を目指し、もう一方は「新機種」による強化を図る。ネットバンキングやキャッシュレス決済の普及により、その立ち位置が揺らぎつつあるATM。

   これから、どこへ向かうのか――。

もはや現金を下ろすだけではない(画像はイメージ)

相互開放でATM拠点廃止へ

   三菱UFJ銀行と三井住友銀行は、2019年9月22日から、両行ATMの共同利用を行う。これまで、三菱UFJのキャッシュカードで三井住友のATMから現金を引き出す、またはその逆の場合には、「他行ATM手数料」として最低でも108円(消費税8%込)がかかっていた。それが今回の相互開放により、時間内(8時45分~21時)は無料、時間外は108円(10月1日以降は110円)となり、同じ銀行のATMで引き出すのと同水準の手数料体系となる。また、これまで利用できなかった、預け入れも相互に可能となる。

   両行の店舗外ATMは、19年3月時点で2818拠点(三菱UFJ:1626、三井住友:1192)。今回の共同利用には、これらの運用コストを一部削減する目的もある。7月の発表文でも「共同利用開始後、両行が近接する一部拠点の廃止を検討しております」と明記し、その時期は事前に知らせるとしている。日本経済新聞電子版(6月28日配信)によると、両行あわせて600~700程度のATM拠点を廃止する予定だといい、その通りになれば4分の1が削減されることになる。

   相互開放については、18年末の時点で、すでに検討中だと公表されていた。当時の報道では、両フィナンシャルグループ(FG)の幹部が、ネットバンキングなどの普及により、ATMを取り巻く環境が変化しているとして、顧客の利便性向上のために検討していると話していた。なおメガバンク3行のうち、みずほは今回参加していない。

キャッシュレスに「寄せていく」新型ATMも

   メガバンクがATM削減を進める一方で、新型機投入へ動くのがセブン銀行だ。「ATM+(プラス)」と名付けた機種を19年9月から順次導入し、20年夏までに東京都内に設置。24年度までに全ATMを置き換える計画になっている。

   「ATM+」の目玉は、「+エリア」と呼ばれる、操作パネル付きの読み取り装置だ。これにより、キャッシュレス決済への対応が強化された。たとえばQRコードはこれまで、操作画面に表示されたコードを、顧客のスマホカメラで読み取る形だった。だが新機種では、スマホに表示させたコードをATMが読み取るため、ユーザーの利便性は高まる。

   「+エリア」では他にも、ICカード式電子マネーのチャージ・残高確認に加え、運転免許証やパスポートといった本人確認書類の読み取りも可能となる。セブン銀行はこれを用いて、来店や郵送が不要な口座開設サービスの実証実験を行うとしている。また、Bluetooth(ブルートゥース)での通信機能も備え、クーポンや利用明細のスマホ配信も可能になるという。お金にまつわるアレコレを「全部入り」にした新モデルが定着すれば、7pay(セブンペイ)での汚名も返上できるかもしれない、

   三菱UFJと三井住友が「旧来ATMのあり方」を問う一方で、セブン銀行は「新たなATMの形」を提案する。方向性は正反対だが、いずれも取り巻く環境の変化を示している。出金だけであれば、駅の券売機や、お店のレジなどに普及しつつある「キャッシュアウト」サービスも強敵になり得る。ATMの明日はどっちだ。

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