7月10日、KDDIは同14日からスマートフォンの通信料金を大幅に引き下げると発表した。新料金は格安スマホ並みの「月額1980円~」。世代や機種を特定しない全面的な通信料引き下げは他社にはない施策だ。
総務省主導で2015年秋から議論を進めてきた通信料の引き下げが、2年弱を経てようやく実現する。
■「ほぼすべてで旧プランより新プランがお得」
7月14日から提供開始する新料金プランは「auピタットプラン」と「auフラットプラン」の2つ。
ピタットプランは月々のデータ使用量の上限を事前に定めず、使った分だけ請求する仕組みだ。たとえば「ピタットプラン(スーパーカケホ・24時間国内通話かけ放題)」の場合、1ギガバイトも使わなかった月の通信料は1980円、3ギガバイト近く使った月は3480円といった具合だ。
フラットプランは大容量ユーザー向けのプラン。最安プランは月20ギガバイトが上限の「フラットプラン20(シンプル)」で月4000円となる。
従来のプランも継続するが、「ほぼすべてのプランで新プランの方がお得」(田中社長)。新プラン導入による業績への影響は、今期の期初計画(営業利益9500億円)に織り込み済みだ。トータルの影響額は今期でマイナス200億円程度だという。
■ドコモやソフトバンクの追随は必至
KDDIの子会社には格安スマホサービスを展開するUQコミュニケーションズがあり、今回のプランはUQとの競合が懸念される。UQは低価格を武器にシェアを急拡大し、2017年3月期にはMVNOで国内シェア7位(MM総研調べ)に躍進している。
田中社長は「UQとは(今回の値下げについて)特に話をしていない。お互い切磋琢磨をしていく」と語った。UQのシェア拡大よりも、自社のユーザーをつなぎ留めるほうがメリットが大きいとみているのだろう。
2015年10月、総務省では安倍晋三首相の指示を発端に有識者会議が発足し、携帯料金の値下げをテーマに集中討議が行われてきた。結果、昨年4月に出されたのはスマホの過度な割引を禁止するガイドラインだった。
これは各社による実質ゼロ円販売の禁止という「値上げ」をもたらし、一部ユーザーの不満を高めた。今回のKDDIの料金引き下げでようやくスタート地点に戻った感がある。ドコモやソフトバンクの追随は必至。「(通信料金を引き下げる)競争はしばらく続くだろう」と田中社長が語っていたのが印象的だった。