EVユーザーの30%が「ガソリン車に戻りたい」と考えていた! 米国では「30%→50%」とさらにアップ、EV需要拡大には何をすべきなのか

EVユーザーの不満と課題

 米国調査会社マッキンゼー・アンド・カンパニーが発表した最新のモビリティ・コンシュマー・パルス調査によると、各国の電気自動車(EV)ユーザーがガソリン車への買い替えを検討している割合とその理由が明らかとなった。

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 この調査結果から、EVユーザーが抱える不満が浮き彫りとなり、

「今後のEV需要を考える上での課題」

を見通すことができる貴重なデータとなった。

 本稿では、EVからガソリン車へ戻りたいとするユーザー心理を解析し、EV需要を今後に伸ばすために克服すべき課題にはどのようなものがあるのかを考える。

EV不満の理由と課題

マッキンゼーによるリポートの抜粋(画像:マッキンゼー・アンド・カンパニー)

マッキンゼーによるリポートの抜粋(画像:マッキンゼー・アンド・カンパニー)

 今回の調査は2024年2月に行われ、15か国のEVユーザー3万6954人を対象に実施された。調査結果で最も興味深かったのは、ガソリン車に戻りたいと回答した割合が国別で記された内容である。

 全体の平均は

「29%」

で、およそ7割のEVユーザーは今後もEVを所有し続けたいとしており、EVに好意的な回答が多かった。

 ガソリン車へ戻りたい割合が最も多かったのは、オーストラリア(49%)で、米国(46%)とブラジル(38%)の上位3か国が平均の29%を上回った。一方、平均以下だったのは、中国(28%)、ドイツ(24%)などで、

「日本(13%)」

は最下位だった。ガソリン車へ戻りたい理由に挙げられたのは、充電施設が不十分(35%)をはじめ、

・所有コストが割高:34%

・長距離運転に不安:32%

などが続いた。それ以外では、

・自宅で充電できず不便:24%

・充電のことを考えるのがストレスになる:21%

・EV用ツールを整備するのが面倒:16%

・ドライビングフィールに満足しない:13%

などが挙げられた。このように挙げられたEVへの不満を克服できれば、EV需要は今後も伸び続ける可能性があると考えられる。自宅を含む充電施設の拡充はもとより、所有コストの低減やドライビングフィール向上などが主な改善点となる。

高価格が阻むEV普及

マッキンゼーによるリポートの抜粋(画像:マッキンゼー・アンド・カンパニー)

マッキンゼーによるリポートの抜粋(画像:マッキンゼー・アンド・カンパニー)

「EVを所有していない人」を対象に、次に購入したいクルマを尋ねた質問に対しては、EVと回答した割合は18%で、2021年調査から4ポイント上昇した。EVを選択しないと回答した割合は21%で、2021年から3ポイント低下しており、EVを購入したい割合は、

「相対的に高まり」

つつある。

 プラグインハイブリッド車(PHEV)と回答した割合は20%と全体で最も高く、2021年から3ポイント上昇しており、昨今のPHEV人気が反映されている。一方で、ガソリン車と回答した割合は、新車17%、中古車14%だった。

 EVを選択しない理由として最も多かったのは、

「価格が高い(45%)」

で、充電に不安(33%)、航続距離に不安(23%)が続いた。

 EVの価格高がEV普及のネックとなっていることは確かで、手頃な価格のEVが普及することはEV需要喚起の“1丁目1番地”となる。また、充電に関する不満や航続距離への不安を取り除くことも、今後のEV普及に向けて避けて通れない課題であることを再認識できた。

EV購入意欲を阻む60%の壁

マッキンゼーによるリポートの抜粋(画像:マッキンゼー・アンド・カンパニー)

マッキンゼーによるリポートの抜粋(画像:マッキンゼー・アンド・カンパニー)

 EVの購入を控えたいと回答した理由はほかにも挙げられており、次のような内容と回答数(割合)だった。最も多かった回答は

「EVに関する知識不足」

で、60%と非常に高く、とりわけ

・日本

・フランス

の割合が高かった。また、自宅でEVを充電できないと回答した割合は29%で、日本が43%と最も高く、

「集合住宅が多い日本の住宅事情」

が反映された。

 EVに否定的な回答として、EVよりもガソリン車を好むとした割合は14%で、特にドイツ(28%)、米国(18%)の割合が高く、ガソリン車の人気が根強い国があることもわかった。

 EVの航続距離に対する期待値も示され、291マイルで2019年の221マイルと比較して3割ほど増えた。実際のEV航続距離平均値は約220マイルで、2019年の期待値レベルにとどまっている。【Honda公式】ZR-V/ゼットアールブイ

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 また、2022年から2024年までの2年間で期待値は5%ほど増えたが、実際の航続距離は2%程度しか伸びておらず、追随できていない。航続距離を伸ばすには、バッテリーの高効率化や軽量化などの課題があるが、EV需要を喚起する上で不可欠な開発課題である。

 コネクティビティ(車両がインターネットや他のデバイスと接続されること)に関する課題も浮き彫りとなり、現在のシステムに満足とした回答はたったの20%だった。コネクティビティに対する主な不満は、

・運転に集中できない

・システムの利用方法が複雑

・使いたい機能が装備されていない

・そもそも使いこなせていない

などで、いわばユーザー側の問題ともいえるような理由が並んだ。こうした不満から浮き彫りとなったのは、ユーザーフレンドリーで、使い勝手のよいコネクティビティサービスの拡充が求められている点である。

先進技術がEV市場をけん引

EVのイメージ(画像:写真AC)

EVのイメージ(画像:写真AC)

 EVユーザーはコネクティビティや先進運転支援システムなど、より高いテクノロジーを重視する傾向にある。

 こうした技術をタイムリーに提供し、EVユーザーのニーズに応えることで、EV需要を喚起していかなければならない。

 今回の調査結果から、EV需要を伸ばすために克服すべき課題が浮き彫りとなった。

 EVメーカー各社による早期開発によって、こうしたニーズが満たされれば、EV需要は今後も増え続けるに違いない。

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