EVとガソリン車が同価格に! 進化する欧州、「補助金依存」からの脱却と低価格モデル投入の新潮流とは

3万ユーロ台のEV登場

 フォルクスワーゲン(VW)グループのシュコダ(Skoda Auto)は、2024年10月1日にプレスイベントを開き、350人以上の参加者を集めた。そのなかで、電気自動車(EV)「エルロック(Elroq)」を2025年第1四半期(1~3月期)に発売することを発表した。

【画像】10月25日発表! これが「電動車の販売割合」です! グラフで見る

 エルロックは、VWグループのEVプラットホームMEBを基にした、欧州市場向けの初めての電動コンパクトSUVだ。

 車両価格は約3万3000ユーロ(約538万円)からスタートし、各国の政府や自治体が支給する数千ユーロの補助金を適用すれば、同セグメントのガソリン車「カロック(Karoq)」と

「ほぼ同じ価格帯」

の約3万ユーロ(約490万円)になる。EVとガソリン車の価格差が縮小している理由としては、EVの

・技術革新

・製造コストの低下

が挙げられる。

 この記事では、世界中で手頃な価格のEVが求められるなか、欧州で低価格のEVが登場するトレンドに注目し、EVとガソリン車の価格差が縮小している動向についてリポートする。

EV・ガソリン車の価格差解消

シュコダ・カロック(画像:シュコダ)

シュコダ・カロック(画像:シュコダ)

 本題に入る前に、フォルクスワーゲンジャパンが現在販売していないシュコダについて紹介する。シュコダ本社はチェコにあり、1895年にオーストリアで自転車の生産を開始した。その後、1899年にオートバイの生産を始め、1901年には自動車の生産もスタートしている。

 1926年に発売された「シュコダ360」以降、シュコダブランドは現在に至るまで継承されている。第二次世界大戦終戦後の1948年に国有化されたが、1991年にVW傘下となり、民営化されてからはVW車両を基にして、主に欧州市場向けに事業展開が進められてきた。

 プレスイベントで発表されたシュコダ・エルロックの販売価格は3万3000ユーロからで、モーター出力に応じて、エントリーレベル「50」(125kW)、量販グレード「60」(150kW)、上位グレード「85」(210kW)の3バージョンがラインアップされている。すべてのモデルはDC急速充電に対応しており、エルロック「50」は約25分以内に80%まで充電可能で、フル充電時の航続距離は約370Kmだ。電動アシストノーパンク三輪自転車 TRUSCO THR-5503E-A 1台

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 一方、ガソリン車のカロックには、1.0L、1.2L、1.5Lのガソリンエンジンと2.0Lのディーゼルエンジンがあり、エントリーレベル「1.0TSI」の販売価格は約3万ユーロから。エンジン出力は110HPで、燃費は17Km/Lとなっている。ボディサイズはエルロックの方がやや大きいが、両モデルを比較すると、ほとんど差はない。補助金を適用した場合、車両価格が同程度で、スペックも拮抗(きっこう)しているため、どちらのモデルを選ぶか迷う人も多いだろう。

 シュコダのような低価格のEVを投入する動きには、ステランティス傘下のオペルも追随している。オペルの英国部門ボクスホールは、補助金の有無にかかわらず、EVとガソリン車を同一価格で販売する方針を明らかにした。新型SUV「フロンテラ」では、EVとハイブリッド車のベース価格を英国で2万3495ポンド(約470万円)に統一し、EVとガソリン車の価格差を解消する初めての試みとなる。

 EVとガソリン車のスペックは拮抗しており、ハイブリッド車は1.2Lのガソリンエンジンと21kWの電動モーターの組み合わせで、エンジン出力は100hpと136hpの2種類がある。一方、EVは113hpの電動モーターを搭載し、航続距離(WLTP暫定モード)は186マイルで、2025年から発売される「ロングレンジ」バージョンでは248マイルになる予定だ。

中国勢の猛攻と対抗策

ルノー・トゥインゴ E-Tech(画像:ルノー)

ルノー・トゥインゴ E-Tech(画像:ルノー)

 市場調査会社ロー・モーションが発表した2024年9月のデータによると、EVおよびプラグイン・ハイブリッド(PHV)の世界販売台数は169万台に達し、前年比で30.5%増加した。

 特に中国での販売が好調で、欧州市場でも回復の兆しが見えている。欧州の販売台数は前年比4.2%増の30万台で、英国では24%と急増し、イタリアやドイツ、デンマークでも販売が増加している。

 EVとガソリン車の価格差が縮小することで、EVの需要拡大が期待されている。手頃な価格のEVが増えることで、ガソリン車からEVへの移行を検討しやすい環境が整いつつある。

 また、10月末から欧州連合(EU)による中国製EVへの追加関税が正式に発動されるが、中国のEVメーカーは欧州市場進出を加速させている。BYDは2025年末までにハンガリー工場を稼働させる予定で、他のメーカーもEU内での現地生産によって追加関税を回避する方法を模索している。これにより、競争力のある低価格のEVを欧州市場に投入するチャンスを狙っている。

 こうした中国勢への対抗策として、欧州メーカーは低価格でEVを販売し始めている。さらに、ルノーは新型EVトゥインゴのプロトタイプ(E-Tech)をパリモーターショー2024に出品し、2万ユーロ(約320万円)以下での発売を目指している。

EV成長のカギを握る低価格製品

ボクスホール・フロンテラ(画像:ボクスホール)

各国の補助金政策や充電インフラの整備状況は、今後もEV需要に大きな影響を与えるだろう。

 しかし、EV需要を喚起するには、政府の補助金支給に依存するだけでは不十分だ。自動車メーカーが低価格のEVを積極的に投入する動きが見られている。

 これからも手の届きやすい価格のEVが増えることで、欧州市場のEV販売が上昇していくか、気になるところだ。

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