EV600kmドライブで見えた!! 日本でEVが普及しない、魅力的に感じられない最大の理由

世界中で自動車の電動化、特にEVの普及を進める潮流となっているが、EVの普及を推進しようにも、日本国内で見ると大きな問題点があり、このままでは実用性が低く、内燃機関を搭載した自動車の座を危うくするほどの存在感は示すことはできないだろう。

 今回は、EVの600kmドライブを通して編集部員が感じた、その問題点について触れていきたい。

文/ベストカー編集部

写真/西尾タクト

■致命的に遅い充電時間! お役人は一度体験するべき!!

 さて、EVの問題点というと、高額であることを挙げる読者諸兄もいるだろうが、今回は価格面については置いておきたい。正直、高かろうが、安かろうが、今回取り上げる問題点は変わらない。

さて、そんなEVで最大の課題といえるのが充電速度と口数だ。

 現行型のEVは、たとえば一充電走行距離が487㎞(カタログ値)のスバル ソルテラ ET-HSであれば、満充電の場合、エアコンなどを使ったとしても300kmは走ることができる。これは、取材で東京から新潟県まで行った時の走行距離だが、900m級と700m級の山を2つ超えて、ノンストップで走った結果だ。平地が多ければ、あと50kmくらいは伸びることだろう。

スバルソルテラはカタログ値で一充電走行可能距離が487~567km。欧州車などでは600km以上の航続距離を持つEVも登場している

スバルソルテラはカタログ値で一充電走行可能距離が487~567km。欧州車などでは600km以上の航続距離を持つEVも登場している© ベストカー 提供

スバルソルテラはカタログ値で一充電走行可能距離が487~567km。欧州車などでは600km以上の航続距離を持つEVも登場している

 正直、EVでも300km走ることができれば、長距離運転を楽しみたい人でも、相当なツワモノでない限りは不便と感じることは少ないと考える。皆さん、旅行に行くのであれば、200kmくらいで一度は休憩を入れるからだ。車両側に関しては、航続距離と価格のバランスを考えた場合、適正と言えるレベルだと考える。

 なので、休憩のタイミングで80%(急速充電では80%が上限)にできれば、不便なく次の250kmくらい先のSA・PAまで走ることができるのだ。

 しかし、SA・PAに設置されているCHAdeMOの急速充電器(40kW)で充電を試みると、各車両の受電能力の影響があるにしても、30分で入れられる電力量はおおむね20kWhとなる。電費5.5km/kWhで100km程度は走れる計算だが、各駅停車感は否めない。ソルテラのバッテリーが71.4kWhだから、80%の57.1kWhまで入れようと思うと30分×3回は必要になる。

北陸自動車道・名立谷浜SAの40kWhの急速充電器に接続した時の表示。30分でバッテリー容量の1/4にあたる、17.5kWh充電された

北陸自動車道・名立谷浜SAの40kWhの急速充電器に接続した時の表示。30分でバッテリー容量の1/4にあたる、17.5kWh充電された© ベストカー 提供

北陸自動車道・名立谷浜SAの40kWhの急速充電器に接続した時の表示。30分でバッテリー容量の1/4にあたる、17.5kWh充電された

 これが40kWhの急速充電器ならまだいいが、20kWhの急速充電器だった場合、目も当てられない。しかも、EVのバッテリーは気温などによって充電速度が遅かったりするから、30分繋いで数%しか増えない……なんてこともあり、最もストレスを感じるシーンとなっている。

 また、急速充電器の口数は、多くのSA・PAで2~3基あれば多いほう。少ないところで1基しかない。そんな状況で、何回も充電するのは他の利用者にも迷惑になってしまう。【Latitude】ご購入はこちらまで

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 最近配備が進んでいる90kWhであれば理論上は30分を2回、150kWhであれば1回で済むが、なにせ数が少ない。しかも、現在整備が進んでいる90kWh急速充電器はマルチポートなので、2台が接続すると45kWhしか出なくなる。

 すべてのSA・PAで5~10口あって、すべての車両が90kWhで充電可能! とかになれば、まだ現実的だと思うが、内燃機関車のようにEVが普及するようなインフラの充足度ではない。

 ちなみに、現在NEXCO管内では急ピッチで高出力の急速充電器を整備する計画だが、高速道路から離れると特に地方都市では充電設備が脆弱になる。自宅に充電設備がない人には厳しい状況だ。

関越自動車道・上里SA(上り)に設置された90kWhの急速充電器。理論上は30分で45kWhの充電が可能だが、マルチポートなので2台繋がると出力は半分に

関越自動車道・上里SA(上り)に設置された90kWhの急速充電器。理論上は30分で45kWhの充電が可能だが、マルチポートなので2台繋がると出力は半分に© ベストカー 提供

関越自動車道・上里SA(上り)に設置された90kWhの急速充電器。理論上は30分で45kWhの充電が可能だが、マルチポートなので2台繋がると出力は半分に

■導入費用が高いのに利益が出ない構造に、維持管理がきちんとされない急速充電器の増加

経済産業省は、急速充電器の普及を促すため導入補助金を出しているが、初期に導入された急速充電器は性能が低く、20~40kWhのものが多い。道の駅などに設置されているものがそれなのだが、導入から年月が経過し、老朽化による性能の低下や、故障が相次いでいる。

 EVを利用している方は、下道で急速充電器を探して道の駅に立ち寄ったが、故障中で使えなかった……という経験をされたことがあるのではないだろうか。航続距離のギリギリで、ドキドキしながら充電器にたどり着いたのに、使えなかった時のあの絶望感たるや、管理者に文句のひとつでも言いたくなる心境だ。

見よ! 「バッテリーを充電してください」の向こう側に見える、絶望の張り紙を! というのは冗談だが、冗談では済まされないケースもある……

見よ! 「バッテリーを充電してください」の向こう側に見える、絶望の張り紙を! というのは冗談だが、冗談では済まされないケースもある……© ベストカー 提供

見よ! 「バッテリーを充電してください」の向こう側に見える、絶望の張り紙を! というのは冗談だが、冗談では済まされないケースもある……

 BEV販売と並行してEVスタンドの建設が進められるが、その値段は1基500万、受電契約(電気を使わなくても支払う必要がある)が60万円と言われている。寿命が10~15年と言われる急速充電器の高額な修理費用を捻出できずにそのまま放置し、結果として閉鎖してしまう充電ステーションも多い。

ちなみに、100kWhの充電器だと設置に2500万円くらいかかると言われており、さらに受電契約とメンテナンスに年間で約250万円かかるという。これだけコストがかかると、現在の日本では高出力の充電器を設置しても、利益を生むことは極めて難しいという実情もある。

 とはいえ、高速道路に整備するのはもちろん、道の駅などの充電設備も拡充しなければ、日本でのEV普及は進まないだろう。国土交通省や経済産業省のお役人さんには、ぜひ一度EVでの地方へのロングランと、急速充電を体験してもらいたい。

【画像ギャラリー】EVって充電でどんだけ入るのよ!? 意外に知らない充電事情(8枚)

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