フォーミュラ1の公式サイトは「フォーミュラ1(以下F1)はレースクイーン起用を中止する」との声明を出した。「F1は、2018年のグランプリシーズンの開幕にあたり、レースクイーンを起用してきた長年の慣例を終了させる。この変更は、グランプリ週末に行われる他のモータースポーツ競技にも当てはまる」との声明を発表した。 F1は、3月25日にオーストラリアのメルボルンで開幕するが、このオーストラリアGPからレースクイーンが廃止されることになった。
これまでは、レース前のグリッドの時間などを使って、レースクイーンが、大会プロモーターやスポンサーの広告宣伝活動を手伝い、華やかで魅力的な光景をF1グランプリにもたらしてきたが、近年、「女性蔑視ではないか」という社会的な批判の声が強まっていた。
F1商業部門のショーン・ブラッチス運営責任者は、「この素晴らしいスポーツ競技に、我々のビジョンをより反映させるため、変更を必要と感じるいくつかの分野を検証してきた。レースクイーンの起用は、F1グランプリにとって数十年にわたって定番となってきたが、この慣習は我々のブランド価値に合うものではなく、現代の社会規範と、かけ離れていると感じている。この慣習は世界中の長年の、また新しいファンを含め、F1に適しているとは思えない」とレースクイーンを廃止した理由を説明している。
全世界のニュースメディアも、さっそくこのニュースを取り上げた。
FOXは、「F1は2016年に米国を拠点とするリバティーメディアによって買収され、その競技の魅力を広げるべく対策を講じてきていた。(レースクイーンの中止に至る)大きな出来事の1つとして、2015年の中国グランプリで、ルイス・ハミルトンが優勝した後のシャンパンファイトでレースクイーンの1人の顔にシャンパンをかけた行為が大きく叩かれたことがある」と、2016年の中国GPで起きた“事件”に対するバッシングが起きて、欧米でレースクイーン廃止論が高まっていたという経緯を紹介した。
レースクイーン廃止の動きは、すでにモータースポーツ界では生まれていて、オーストラリアのV8スーパーカー・シリーズは2016年にレースクイーン起用を止め、また他のプロ競技団体ではあるが、英国プロフェッショナル・ダーツ・コーポレーションも、最近になり、放送パートナーからの圧力を受けて、(入場で選手と一緒に歩く)”ウォーク・オン”ガールの起用を止めることを決断したという。
英国の高級紙、ガーディアン紙も、「現代の社会規範に矛盾する」という運営側の廃止理由コメントと共に「この動きはプロフェッショナル・ダーツ・コーポレーションが大会で選手に付き添って入場する”ウォーク・オン・ガール”の起用を止めた決断に続くもの」と、世界的な流れに沿ったものであることを伝えた。
英国でスポーツにおける女性の立場を支援しているWomen’s Sports Trust社は、この発表を受けて「レースクイーンの起用中止を決断したF1に感謝します。別のスポーツ競技も、どういう動きをすればいいのかについての明確な判断を下してくれました」とツイッターで声明を発表している。
一方で“レースクイーン廃止”の流れに反対する意見もあるようで、前出のガーディアン紙の記事では「ダーツ(大会)でのウォーク・オン・ガール起用中止の決断に対する批判は、現在テレビで活躍する元”レースクイーン”のケリー・ブルックさんも含まれる」と伝えた。
イングランドの人気女優であるケリー・ブルックさん(38)は、「(レースクイーンは)これまで得た中で最高の仕事の1つでした。華やかに着こなし、明らかに見栄えの良いものでしたが、それを(何かに)利用されていると感じたことはありませんでした」と、コメントしている。
英国のBBCスポーツでは、昨年、「F1にレースクイーンは必要か」という世論調査を行ったところ、60%が「必要」と回答したという。BBCスポーツは、その結果を踏まえた上で、「社会の変化でレースクイーンの起用は、議論の対象となり、他のレースでは、女性の代わりに男性モデルやマスコットとして子供が起用されるなど新たな選択肢が試されている」と報じた。
女性の社会進出が当たり前となり、世界的に男女の雇用均衡が進んでいる時代の流れが、ついにレースクイーンという職業を過去のものへと追いやったようだ。日本では、レースクイーンから人気タレントやアイドルが生まれてきたが、そういうパターンも消滅してしまうのかもしれない。