グーグルは、5月8日に、Pixelシリーズの廉価版にあたる「Pixel 3a」と「Pixel 3a XL」の2機種を発表しました。どちらのモデルも日本で発売される予定で、「Pixel 3」「Pixel 3 XL」と同様、日本版はFeliCaを搭載。おサイフケータイやGoogle Payの非接触決済に対応します。ディスプレイサイズはPixel 3aが5.6インチとPixel 3より0.1インチ大きめ。一方でPixel 3a XLは6.0インチと、Pixel 3 XLの6.3インチより0.3インチほど小さくなっています。
本日(5月8日)よりGoogle Storeで予約受付を開始し、5月17日に発売予定。携帯キャリアからの発売も予定します。
(実機画像はEngadget米国版より)
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▲ミドルレンジモデルのPixel 3a(左)とPixel 3a XL(右)。画像提供:Google
2機種とも、チップセットにSnapdragon 670を採用。Pixelシリーズ初のミドルレンジモデルという位置づけになります。チップセット以外でも、ボディをガラスと金属からポリカーボネートにしたり、非接触充電を省いたり、防水性能がIP52の「耐水」になっていたりと、随所にコストダウンを図った跡が見え隠れします。
▲本体の素材はポリカーボネートに
結果として、日本での販売価格は、Pixel 3aが4万8600円、Pixel 3a XLが6万円(いずれも税込)と、比較的リーズナブルに。日本市場の動向にマッチしているのは偶然かもしれませんが、分離モデル導入後にも買いやすい価格になっています。SIMフリーモデルを単体で購入してMVNOとセットで使うにも、ちょうどよさそうな端末といえるでしょう。
AIを駆使したカメラ性能は「Pixel 3」からキープ
チップセットやボディの材質などでコストダウンを図った一方で、Pixel 3、3 XLの売りであったAIを駆使したカメラの性能はキープ。カメラモジュールは同じもので、AIによって実現したトップショットやフォトブース、さらには「暗視カメラのように明るく写る」と話題になった夜景モードにも対応しています。グーグルによると、写真の写りに関しては基本的に、Pixel 3、3 XLと同等に仕上げているといいます。
▲Pixel 3、3 XLで話題になったカメラ機能はそのまま
写真に付随するサービスとして、Googleフォトに元画質のまま無制限にアップロードする特典もついています。ストレージは64GBと、写真や動画を頻繁に撮る人には少々不安な容量ですが、Googleフォトを駆使してクラウド上でこれらを管理するようにすれば、容量不足に悩まされることはなさそうです。
ただし、チップセットがSnapdragon 670になっている上に、画像処理を担っていた「Pixel Visual Core」も非搭載で、処理速度についてはPixel 3、3 XLよりは見劣りします。ソフトウェアを最適化し、処理を高速化したといい、Pixel 3a、3a XLを単体で使っているぶんにはストレスを感じることはなさそうですが、Pixel 3、3 XLを比較すると違いは分かるかもしれません。
とはいえ、先に挙げたように価格は上位モデルの約半額。これで同等の画質というのは、非常にお買い得といえるでしょう。3Dグラフィックを駆使したゲームなど、パフォーマンスを極限まで求めるアプリは利用しないものの、カメラにはこだわりたい。そんなユーザーにしっかり響く端末といえそうです。ミドルレンジモデルというと、カメラの画質まで落とされてしまうのが一般的でしたが、そうではなく、あくまでパフォーマンスやボディの素材の違いに留めたのは英断といえます。
「ハイエンドスマホの高価格化」に一石
では、なぜグーグルがPixel 3a、3a XLを開発したのでしょうか。その理由は、ハイエンドモデルの高価格化にあるといいます。グーグルの Pixelビジネス担当シニアディレクター、ナンダ・ラマチャンドラン氏は、「ここ数年、携帯電話の価格はどんどん上がっている」としながら、2年前のフラッグシップモデルは650ドル(約7万円)程度だったと指摘。「2年前に買った人がちょうど買い替える時期にきているが、同じフラッグシップモデルだと1000ドル(約11万円)払わなければならない」と現状を語りました。
▲ミドルレンジモデル投入の狙いを語ったラマチャンドラン氏。写真は昨年10月のもの
確かにそのぶんスペックは上がっているのですが、ユーザーの財布の中身は無尽蔵ではありません。スマホにかけられる金額には限り人も多いでしょう。結果として、多くのユーザーが、「2年前に買ったものをそのまま使い続けるか、少し金額を落として払えるものを買うか」(同)の二択になるというのがラマチャンドラン氏の見立てです。
そこでグーグルは、「エントリープレミアムという考え方を導入した」(同)といいます。同社の得意とするソフトウェアやAIの力はそのまま使いつつ、ハードウェアの一部をそぎ落とすことで、価格を引き下げたというわけです。ラマチャンドラン氏の言葉を借りると、「プレミアムな体験をお求めやすい価格で提供する」といえるでしょう。
一方で、プレミアムな体験をするうえで、欠かせないハードウェアもあります。特にカメラのセンサーやモジュールの違いは、画質に直結します。だからこそ、Pixel 3a、3a XLでは、他のスペックは落としつつも、カメラ機能は上位モデルと同等に仕上げてきたと考えることができます。
▲カメラ以外でも、ハードウェアに依存する機能は上位モデル相当のものが搭載されている。写真は昨年発表されたPixel 3、3 XLのもの
ディスプレイは有機EL、握って操作のActive Edgeにも対応
カメラ以外では、セキュリティ用チップの「Titan M」も搭載されているほか、ディスプレイも有機ELで、Always-on Displayなどにも対応。握ってGoogleアシスタントを起動する、Active Edgeも搭載しています。パッと見で分かるところは上位モデル相当にしつつ、気づかれにくいところでコストを下げたという点では、取捨選択が上手だと感じました。