9月12日に、米国で「iPhone 5」が発表され、18日に予約の受け付けが始まった。そのわずか1日で、米国内では予約が200万台を突破した。これは「iPhone 4S」の初日100万台予約を上回るペースで、スマートフォン市場におけるiPhone 5のスタートダッシュは好調な滑り出しを見せている。
そんな中、もう1つの市場が大きく動き始めた。それはiPhoneのケースを中心とした周辺機器市場だ。すでに国内では800億円規模にまで成長していると言われ、大きな産業となりつつある周辺機器市場は、iPhone 5の発売でどう変わるのか。iPhone/iPad向けのアクセサリー専門店を運営し、出店ラッシュが続くAppBank Store 販売マネージャーの竹下結夏氏と営業部マネージャーの岡部源紀氏へのインタビューを交えながら、iPhone 5をめぐる最新のアクセサリ市場を調べてみた。
●大きく変化したケース市場
9月に入って、これまでiPhone発売時には見られなかった現象が起きた。それは、発売どころかまだ発表もされていなかったiPhone 5のケースが多数出回ったという点だ。これまでは、新型iPhoneの発売時にはケースの種類も少なく、クリアなケースやシンプルなケースが中心で、徐々にデザインや仕様、素材に凝った商品が出てくるというのが一般的だった。しかし、iPhone 5のケースに関しては、すでに数百種類というケースが市場に流通しており、さらに機能面やデザイン面で優れたケースが発売、また予約販売されている。過去にはなかった事例といえる。
「21日のiPhone 5発売と同時に300種類以上、月内には500種類以上のiPhone 5のケースを販売できる体制を整えています」と語るのは、AppBank Storeの岡部氏。21日に発売できるということは、単純に考えても9月初旬には量産に入っていないと間に合わないスケジュールだ。なぜここまで早くiPhone5のケースが発売することができたのだろうか。
●すでに過去最高のケース売上を記録!
ここまでiPhone 5対応ケースがそろった理由の1つとして挙げられるのが、事前リーク情報の多さだ。今回のiPhone 5は、かなり早い段階から正確にその仕様が中国国内で出回っていた。実際筆者も2カ月前に中国を訪問した際、すでにiPhone 5の設計図や金型らしきものがあるのを確認していたし、ほとんどの工場でケースの量産ができる体制が整っていた。なおかつ、「今までケースメーカーは、新型iPhoneの予約状況や売れ行きを見ながら、ケースを作り出荷していたが、ケースメーカーが過去実績として売れ筋、ビジネス規模を把握し、通年で売れている商品をベースに作り込んできているため数が多い」(岡部氏)という。
iPhoneの正確な情報、そして今までの実績で裏付けされたビジネスメリットがあったからこそ、今回の大量出荷が実現していたようだ。
毎年初回に出荷されるiPhoneケースは売れる傾向にあり、その出荷台数も年々増加傾向にある。今回は種類も非常に多く、ユーザーが選べる選択肢が広がったということもあり、「すでにAppBank StoreでもiPhone 5用ケースの予約をWebで受け付けていますが、売れている商品は数千個以上販売されています。しかも、全商品の30%はすでに完売の状態で、Storeをオープンしてから歴代最高の売上を記録しています」と竹下氏。
●デザイン、機能、素材も充実しているiPhone 5のケース
AppBank Storeで300種類以上をすでに販売しているというiPhone 5用のケース。具体的にはどのようなものがあるのか。デザイン、機能、素材にこだわったiPhone 5用のケースをいくつか紹介しよう。
・iPhone5 Real wood case
イタリアの木材専門デザイン・素材会社「Tabu」がデザインしたおしゃれな木の素材を採用し、独自の技術により木とケースを融合した製品。水に濡れても離れないという優れもの。デザイン、ファッション性の高さだけではなく、素材に木を使った商品が発売時点で購入できることは極めて珍しい。このシリーズだけで9種類ものオシャレなケースが発売されている。価格は3680円。
・iDress ジュエリーカバー iP5-KT5 for iPhone5
全面にストーンがちりばめられているiPhoneケース。キティーを中心に、マイメロディー、キキララなど、キャラクター系のオシャレでかわいいケースが11種類も販売されている。価格は1980円。
・iPhone5用 ハイブリッドバンパー Edge Band
Apple純正のもの以外でバンパーが初回から発売されるのは非常に珍しい。かなり正確にiPhoneの寸法を理解していないと作れないからだ。さまざまなカラーの組み合わせがあり、全部で45種類発売されている。そのうち35%近くは完売しており、非常に人気のアイテム。価格は1470円。
・iPhone5 Masstige Lettering Diary
皮を使い、かっこ良く仕上げた商品。丈夫な耐久性とスリムなデザイン、そしてリーズナブルな価格で人気が高い。種類は全2種類。3990円で購入できる。
・iPhone 5 Combi Leopard
ポリウレタン素材のヒョウ柄パネルを貼り付け、ゴージャス感を演出。見かけだけのオシャレではなく、薄く軽量ながら耐久性に優れたポリカーボネイト素材で裏面/コーナー部をしっかりとガードしてくれる。種類は全3種で価格は2980円。
・iPhone 5 Combi Korean crystal
まばゆい光を放つオシャレなiPhoneケース。キュービックをパネルの全体に使用し熟練工が手作業で綺麗に仕上げたキラキラケース。こちらも一般プラスチックに比べて、薄く軽量ながら耐久性に優れたポリカーボネイト素材で裏面/コーナー部をしっかりとガードしてくれる。全3種類で価格はそれぞれ5980円。
・iLavie Leathertech ワニ皮模様 for iPhone5
革のような素材感でラグジュアリーな雰囲気を演出。iPhoneをおしゃれに楽しく保護してくれる。素材にはポリカーボネートとポリウレタンを組み合わせて、ソフトな肌触りと耐衝撃性を兼ね備えている。種類は全部で4種類。価格は2980円。
・OtterBox Defender for iPhone5 Max 4HD Blazed
iPhoneを強い衝撃から守ってくれるケース。航空機のコックピットなどにも採用される耐久性の高いハードなポリカーボネートを採用しており、ディスプレイ部分には、クリアプロテクターを採用しているので、傷や汚れを防ぎつつ、快適なタッチ操作が行える。バックパーツには、低反発性の素材を採用しており、収納したiPhoneにかかる衝撃を緩和してくれる。全7種類を用意しており、 価格は5980円。
●意外に売れる!? 保護フィルム
ケースのほかにも、意外なほど売れている商品がある。AppBank Storeの売上ランキングを見てみよう。iPhone 5が発表された2012年9月12日~9月19日までの1週間分を集計したものだ。
ランキング表(http://www.itmedia.co.jp/mobile/articles/1209/21/news030.html)
驚いたのが、iPhoneのガラス面にフィルムを貼付け、画面を保護するというフィルム系商品が売上上位に3つもランクインしている点だ。「フィルムの売上が非常に高く、カッターでも傷が付けられないようなガラスフィルムなどが特に売れています。画面に傷を付けないように、iPhoneを使いたいという文化が、着実に根付いて来ています」(竹下氏)という。フィルムの張り付けサービスを行っているAppBankStore店頭では、女性などのライトユーザーによる購入がさらに加速するのではと期待を寄せている。
Webでは購入者が男性中心のため、かわいいケースやオシャレなケースよりも、シンプルな商品が売れているが、店頭での販売が始まれば女性向け商品も売れるという。
今回非常に印象に残ったのが、最初からデザインや機能にこだわった商品が発売されている点だ。今まではソフトケースなどが中心で、デザインやカラーなどもシンプルなものが非常に多かったが、500種類もの素材、デザインなどにこだわった製品が次々に開発されている。今後ファッションの一部としてiPhoneをとらえる人や女性層の増加により、さらに周辺機器市場は成長するに違いない。
●プロフィール:大野泰敬(おおのやすのり)
スマートフォン・コーディネイター 4001field統括プロデューサー/復興支援任意団体「all for one」理事長
テレビや雑誌、イベントなどのプロデュースを行いながら、世の中の人にスマートフォンの楽しみ方を知ってもらうための活動を精力的に展開。スマートフォン市場に精通しており、周辺機器、アプリ市場に関連するスペシャリスト。代理店教育、アプリプロモーション、企業の戦略構築など、スマートフォンに関連する幅広い分野で活躍。また、吉本興業にコメンテーターとして所属し、積極的に講演なども行っている。