JA共済「自爆営業」平均額は月5.4万円!?職員ら1386人の声で判明した“ワーストJA”

『週刊ダイヤモンド』11月5日号の第1特集は「JAと郵政 『昭和』巨大組織の病根」です。農協と日本郵政は、いまや「変われない組織」の代名詞です。問題は、前時代的なノルマ営業や“自爆推進”だけではありません。耳を疑うような露骨なパワハラやセクハラが横行し、それらを隠蔽(いんぺい)する古い体質も温存されたままです。若手の職員や社員から見放されつつある巨大組織の病根を徹底解明します。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)

怒れる農協職員らが不正を告発若手職員を流出させる「昭和」の事業推進

 ノルマを達成するために、農協職員が自腹を切って本来不要な共済(保険)に加入する「自爆営業」が多いJAはどこか――。

 今や「変われない組織」の代名詞となった農協と日本郵政。農協でも、日本郵政グループ傘下のかんぽ生命保険による保険の不適切販売と同様の不正行為が横行している。

 そこでダイヤモンド編集部は、農協職員らを対象に調査を実施。1386人から得たアンケートの回答に基づき、農協職員が本来は不要な共済に加入する自爆営業が横行しているJAのランキングを初めてまとめた。

 前回の特集『JA自爆営業の闇 第2のかんぽ不正』では、自爆が多い都道府県別のランキングを掲載したが、農協別のランキングまでは踏み込んでいなかった。

 今回、農協別のランキングが可能になったのは、アンケートの期限を延長して、有効回答数を877から1386に増やすことができたからだ。

 アンケート回答者からは共済の推進による精神的、経済的な負担を訴える声が相次いだ。共済の平均自爆額は月額5万4067円だった。中には月額40万円以上を自爆している人もいた。

 自爆は職員の可処分所得を目減りさせ、横領など不正の温床となる。このことは、不祥事が多発したJA高知県やJAおおいたの第三者委員会がそれぞれまとめた報告書でも指摘されている。

 自爆が横行し、職員の大量離職リスクや、職員のモラル低下リスクにさらされている農協はいったいどこなのか。

JA共済連の会長の地元農協がワースト1位は偶然ではない

 農協職員へのアンケート結果を基に、自爆営業の平均額や期間、ノルマを課された職員の範囲などを総合評価して作成した、「JA共済“自爆営業”農協ランキング」のワースト1位は、JA晴れの国岡山だった。奇しくも農協の共済事業の大元締めである、JA共済連の現会長である青江伯夫氏の地元の農協だ。

 JAグループでは、JA共済連など全国組織の会長を地域の農協幹部らが兼務する。そして、全国組織のトップを輩出した地域の農協は、その全国組織が課すノルマ推進に一層力を入れなければならない不文律がある。つまり、農協の組合長が全国組織で栄達するのは、地元の職員にとってはいい迷惑なのである。

 ワースト1位になったJA晴れの国岡山の特徴は、金融の渉外担当者だけでなく、営農指導員など保険の専門知識を持たない職員にまでノルマを課していることだ。

 JA晴れの国岡山には特有の問題がある。合併前の旧農協によって、金融の渉外担当者「以外」の職員が課される共済のノルマに隔たりがあるのだ。

 職員の採用は旧農協ごとに行なわれているため、職員の中には「自分には共済のノルマがあるのに、同期入社で同部門でも共済のノルマがない職員もいる」という不公平感を抱いている。

 そうした不満もあり「金融部門以外にも共済のノルマを課す旧農協(旧JA岡山西)の若手職員の離職率が50%にはね上がり、ノルマを課さない旧農協の離職率10〜20%を大幅に上っている。しかも、こうした人事の大問題が放置されている」(ある中堅幹部職員)という。

 若手職員による離職問題は深刻だ。

 JA晴れの国岡山の総代会(企業の株主総会に当たる)で、出席者から「共済のノルマが多いから職員が辞めているのではないか?」という質問が出たことがある。だが、経営陣は「それが原因で辞めた職員はいるかもしれない。だが、頑張りよるやつは残るし、できんやつは残らない」などと回答し、問題と真摯に向き合う姿勢は示されなかったという。

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