KDDIの新構想は、スマホの中に”山手線”

近年、数多くのIT企業への出資や買収を進めているKDDIが、今度はスマートフォンの新たな構想「Syn.alliance」(シンドットアライアンス)を打ち出した。10月16日からサービスをスタートしており、今年に入って傘下に収めた生活情報サイト「ナナピ」やランキング形式の情報アプリ「クランク」、エンタメメディア「ナタリー」といった子会社に加えて、ナビサービスのナビタイム・ジャパン、気象予報のウェザーニューズなど合計12社が参加。これらサービスのユーザー数を合計すると4000万人を超す規模になる。
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■ 送客のプラットフォームを構築
 シンドットアライアンスとは、サービス間で送客するプラットフォームだ。各サービスに共通するサイドメニューを設け、ユーザーが行き来しやすいようにしている。サイドメニューの上部には広告スペースがあり、広告収入はPV(閲覧数)に応じて配分される仕組みだ。また、それぞれのサイトの更新情報も確認できる。
 このアライアンスを統括するKDDI新規ビジネス推進本部の森岡康一氏は、ヤフージャパンのコンテンツプロデューサーやFacebook Japan副代表などを務めた人物。森岡氏は「スマホには多くのアプリがあり、自分にあったサービスを探すのは難しい。結局、みんな8つくらいのアプリしか使っていない。そこで、各ジャンルの人気サービスを厳選し、協力を得てユーザーが行き来しやすい仕組みを作った」と説明する。
 プラットフォームのイメージは山手線で、「どの駅(サービス)からも乗れるし、どの駅にも行くことができる。パソコン時代のポータルサイトのように、中心となるサイトがあるわけではない。どのサービスもユーザーの入口になる」(森岡氏)。現在は12社、12ジャンルを展開するが、ユーザーの利便性を考慮しながら、まずは20程度までジャンルを広げる方針だ。
 新しい構想の特徴として、旗振り役であるKDDIが”黒子”に徹している点が挙げられる。KDDIの田中孝司社長は10月16日の発表会見でも「今日の発表は、auということを忘れて聞いてください」ときっぱり。参加企業の関係者が集結して披露されたサービスメニューの中に、auやKDDIのロゴを目にすることはなかった。森岡氏も「オープンインターネットの取り組みで、auがどうといったことはあまり考えていない」と話す。
 露出を抑えているのは、プラットフォームの狙いがKDDI以外のユーザーとの接点を持つことにあるからだ。KDDIでは自社向けコンテンツサービス「auスマートパス」(会員数1100万)を展開するが、これだけでは他社のユーザーにリーチできない。とはいえ、携帯電話会社のサービスを他社に開放してヒットした試しもない。そこでKDDIは黒子に徹し、プラットフォームを提供することで、他社ユーザーにもリーチしようと考えた。
■ 集客拡大を優先、収益化は未定
 高橋誠専務は「今後、アクセスしたユーザーのデータを分析して送客の仕組みを変えたり、サービス改善に生かしたりする。電子マネーサービスなどリアルとの連携も考えている」と話す。もっとも、ユーザーとの接点をうまく作れたとして、そこからKDDIとしてどのようなビジネスに結び付け、収益化していくかという点は未定だ。
 さらに、今回参加した12社が本当に各ジャンルの”強者連合”なのか、ユーザーは各サービスに共通するサイドメニューを活用できるのかといった点にも疑問が残る。森岡氏は「第2弾、3弾と発表していきたい」としている。携帯会社の発想から離れた”山手線”のプラットフォームは、いったいどれだけの人の往来を創出できるのか。収益化も見据えるならば、KDDIにとって難易度の高い挑戦となりそうだ。

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