ジャニーズ会見の騒ぎが収まる気配がない。当初、批判を浴びたのは司会から指名されていないのに不規則発言を連発した東京新聞の望月衣塑子記者だった。だが、「NGリスト」の発覚を境に、「八百長だ!」と風向きはジャニーズ側へ。しまいに、会場にいた「挙手せず怒声をあげてた不審な男性」が「ジャニーズ側から雇われたコワモテ」との憶測まで飛び交い……。だが、不審な男はサクラでも総会屋でもなかった。かねてから望月記者を批判的に取り上げていた新聞社の記者だった。
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【写真7枚】会見で“暴走”しながら挙手する望月衣塑子記者と「産経新聞記者」が座っていた座席表
夜討ち朝駆けしてくればいい
「いったい何の騒ぎが起きているんだって気持ちです。もう少し冷静に考えるべきです」と語るのは、10月2日に開かれたジャニーズ事務所の2回目の会見に出席したテレビ局の記者である。
「確かに、藤島ジュリー景子氏や前副社長の白波瀬傑氏が欠席するなど、ジャニーズ側には問題がありました。けれど、それとNGリストは別の話。会見に有象無象のジャーナリストが300人も集まり、中にはルールを無視して質問を被せ続けたり、セカンドレイプとも取れる質問を繰り出す“前科”のある人もいた。会見を荒らさないようウラで対策するのも仕方のない話で、それがバレてしまったことがマヌケなだけです。もちろん、濡れ衣を着せられた人がいたのなら可哀想な話ですが……」
別のベテラン記者も「記者会見という場を履き違えて考えている人が多い」と続ける。
「そんなに独自に聞きたいことがあるならば、東山紀之社長の家を夜討ち朝駆けして聞いてくればいい。今も騒いでいる人たちは、あの場を“取材”ではなく“吊し上げ”の場にしたかっただけだと思います」
鈴木エイト氏の発信で広まった「サクラ疑惑」
ジャニーズ事務所に対する世間の鬱憤はたまる一方で、とうとう「陰謀論」のような話まで出てきた。まず持ち上がったのは「白いマスク集団」である。
《最前列の芸能記者たちは、なぜかマスクを着用。それがあたかも目印のようだった》
これを言い出したのは望月記者だ。10月3日に自身のX(旧Twitter)に書き込まれたこの投稿は、当初、「それってあなたの感想でしょ」と一蹴されかけたが、NGリストが発覚すると信憑性を帯びて語られるようになった。
次に出てきたのが「野次るけど挙手しない人物」。こちらを真っ先に唱えたのはジャーナリストの鈴木エイト氏である。
《ジャニーズ事務所会見当日、私が抱いた最も大きな違和感は“客席”上手側の後ろの方に座っていた男性の存在とその言動だ。大柄なこの男性は質疑応答の際も手を挙げることなく、NGリストの記者が質問者指名選別に異論を唱えていた時、被せるように「捌けよ、司会がぁ!」「司会がちゃんと回せよ!」などと罵声を浴びせていた。私の直感だが、この男性はメディア関係者ではない》
鈴木氏が8日、自身のXに書き込んだこのポスト は、瞬く間に拡散。すかさず反応したのが東京スポーツとデイリースポーツで、同日中に鈴木氏のポストをコピペするだけのいわゆる“コタツ記事”を配信した。鈴木氏の投稿は、13日午前現在、9000回近くリポストされている。
次々と加勢するマスコミ
10日にはFRIDAYデジタルが〈ジャニーズ会見『NGリスト』以外も…『ちゃんと回せよ!』挙手せず“野次だけ”記者の『異様正体』〉との記事で加勢。しかし、この記事も会見場で「謎の男」を目撃したテレビ局の記者を取材している体にはなっているものの、結局、正体はわからずじまいの中身のない記事だった。
同日、鈴木氏は上記の記事を引用しながら謎の男についてXに再投稿。
《ジャニーズ事務所会見の際、私が座っていたのは黄色の位置、手も上げず怒号を発していた不審な男性がいたのは赤で囲った辺り。罵声を浴びせた後にニヤニヤしていたのが「記者っぽくないな」と思った理由のひとつ。》
今度は座席表の画像もアップ。謎の男がいた位置まで示した。すると、紀藤正樹弁護士がXで《いわゆる荒れる株主総会にしばしば見かける会社側の“サクラ”で、記者でない可能性があります》と呼応し、それをまた中日スポーツがコタツ記事に……。
SNS上で謎の男の検証が始まり、ついには「コンサル会社の回し者」だの「ジャニーズに雇われたヤクザ」などと言われるに至ったのである。
彼ならやりかねない
だが、真実は違った。彼は産経新聞の記者(30代)だった。デイリー新潮が複数の参加者に、スキンヘッドに髭面でガタイのいい産経記者の写真を示すと、「彼で間違いないです」と答えた。
「ドスの効いた声でヤジっていたので、ひときわ目立っていた。確かに鈴木さんが指し示したあたりに座っていましたよ」(参加した記者)
「怖かったです。ギャーギャー騒ぎ続ける望月さんも迷惑でしたが、ヤクザまがいの怒声で恫喝する彼もどうかと思います」(別の記者)
すでに産経新聞の社内でも、話題になっているという。
「お恥ずかしい限りですが、彼ならやりかねない。“右寄り”な姿勢を隠さない記者で、日頃から言うことがドギツい。望月さんが騒ぐのを黙っていられなかったのでしょうが、記者としてあってはならない言動です」(産経新聞関係者)
産経新聞に質問状を送ると、
「当社としてもご指摘の点は確認しております。今後とも記者会見のみならず取材活動全般にわたり適切な言動をとるよう各記者に指導してまいります」
との回答だった。鈴木氏は電話取材に下記のように答えた。
「最初は直感で記者っぽくないと感じて投稿したのですが、その後、映像に残っていた男性の前後の動きを確認すると、ノートパソコンを持っていたりしていたので記者かもしれないと思い直していたところです。今後、投稿する際は注意深く、前後の状況も見て発信するよう心がけます」
かくして陰謀論は広まっていくのである。
デイリー新潮編集部