納豆の年間購入額日本一の座を巡り、福島市と水戸市がつばぜり合いを続けている。4年連続で首位をひた走る福島市を、納豆名産地の水戸市が粘り強く追う展開。ともに「納豆のまち」を掲げる両市の消費拡大施策の応酬が熱を帯びる。(福島総局・横山勲)
東北勢が上位を独占
2012年以降の1世帯当たり納豆年間購入額の全国トップ3自治体は表の通りで、東北勢が上位の常連だ。福島市の平均購入額は6199円で19~22年に連続1位。5823円の水戸市は16年を最後に日本一から遠ざかる。
水戸市は王座奪還に向け、あの手この手を尽くす。ご飯にかける以外の食べ方の普及を狙い、水戸商工会議所などが18~21年に市内で「納豆食べ方コンテスト」を開催した。納豆を使ったハンバーグやギョーザ、ナゲットなど多彩なレシピが集まり盛り上がったが、担当者は「市民にレシピが普及したかというと、いまいちだった」と話す。
危機感を強めた水戸市は22年6月、7月10日を市独自の記念日「納豆の日」とする条例を制定。市議会の有志による議員提案で「納豆の積極的な消費拡大を図る」とぶち上げた。機運は高まっているといい、条例効果に期待がかかる。
5年連続の首位を目指す福島市は、追い上げる水戸市の引き離しに躍起だ。
市は今年初めて「納豆料理コンテスト」を開催。市内の飲食店など30店舗からメニューを募り、今月10日にインターネットで人気投票を始めた。水戸市のコンテストは21年で休止状態となっており、お株を奪った格好だ。
「特産地でもないのになぜ…?」残る謎
そもそも、なぜ特産地ではない福島市で納豆の購入額が多いのか。木幡浩市長は「お米がおいしいから」と自説を語るが、明確な理由は不明だ。
未確認飛行物体の目撃が相次ぎ「UFOの里」として知られる福島市飯野町の松崎魚店は、納豆を具材にした揚げ春巻きを「宇宙人の指先」と銘打ってコンテストに応募した。
レシピを考案した松崎享司店長(51)は「確かに市内には冷蔵庫に納豆がないと気が済まない人が多いが(納豆日本一という)実感はない」と苦笑いしつつ、「良い形で納豆を地域のPR材料にしたい」と意気込む。