岩手県内の年間発生件数が過去最多を更新したツキノワグマの人的被害に歯止めをかけようと、岩手大ツキノワグマ研究会は14日、クマの生態や遭遇時の対応などを伝える啓発キャンペーンを盛岡市のイオンモール盛岡で初めて開いた。
写真パネル約20点を展示し、学生が対策を解説。被害事例を基に(1)鈴やラジオで常に大きな音を出し続ける(2)人里では果樹を早く摘み取り、生ごみなど餌になる物は外に置かない(3)襲われそうになったら、治療が難しい顔を最優先で守る-などと訴え、買い物客は足を止めて聞き入った。
登山が趣味という盛岡市の無職大森不二夫さん(68)は「雨で鈴の音が響きにくくなると知り、クマよけのホイッスルを買おうと思った。人とクマの生活圏は重なりつつある。しっかり対策したい」と話した。
研究会の4年滝川あかりさん(21)は「クマは本来臆病で、遠ざける対策をしていれば被害の多くは防げる。知識を実践に生かしてほしい」と語った。
県内のクマによる人的被害は14日現在33件(34人)。過去最多だった2020年度の27件(29人)を既に大きく上回り、県が警戒を呼びかけている。
秋田県内、捕獲数は600頭近く増加
秋田県は16日、県内で相次ぐツキノワグマの目撃が本年度は9日時点で1785件に上り、昨年度(730件)の2倍超になっていると明らかにした。捕獲頭数も1030頭で600頭近く増えているほか、人的被害は16日までに計43人と過去最多を更新している。
県議会の県政協議会で佐竹敬久知事が示した。県によると、近年の目撃件数は2019年度が672件、20年度931件、21年度864件。直近4年の捕獲頭数は442(22年度)~688(21年度)頭で推移している。本年度の人的被害は17年度の20人を上回り過去最多となった。
佐竹知事は駆除頭数の増加で、自治体の鳥獣被害対策実施隊員の負担が増しているとして、駆除1頭につき5000円の慰労金支給を検討しているなどと説明。「捕獲しやすいよう、今後は猟友会の要望を聞きながら、できる対応をしていきたい」と述べた。