自家用車で客を運ぶ『ライドシェア』特区での運転手の実情「収入目当てではできない」

大阪府の吉村洋文知事は10月19日、自家用車を使って有料で乗客を運ぶ「ライドシェア」について、来年秋から2025年の万博開催期間中にかけて導入を目指す方針を示しました。11月1日付けで大阪府と市で作る検討チームを立ち上げるということです。

 (大阪府 吉村洋文知事)「タクシー以外の移動の選択肢を大都市・大阪において示していくべきだと思います。おそらくいろいろな課題も出てくると思うので、そこは修正をすればいい。もしこれがいいものだとなれば全国に広げていけばいいと」

 ライドシェアをめぐっては、岸田文雄総理も10月20日から始まる臨時国会の所信表明演説で導入の検討を表明するとみられ、議論が本格化しています。その背景にあるのがドライバー不足。大阪府の富田林市・太子町・河南町・千早赤阪村で現在14路線を走らせる「金剛バス」は12月で運行を終了することを決めました。

 (金剛自動車 白江暢孝社長)「なくなるということはすごく…決めることも言うこともすごく辛いことではあったんですけど、もう限界です。正直言いまして」

 バス廃止を受けて10月19日に2回目の協議会が開かれ、近鉄バスが太子町・河南町の3路線、南海バスが富田林市・千早赤阪村の2路線を引き継ぎ、現状の運賃を引き継ぐ案が示されました。

 またドライバー不足は観光地でも。京都の清水寺へと向かう市バス乗り場は大行列。さらに京都駅前のタクシー乗り場でも長い列ができていて、乗車までに10分以上待たなければならないことも珍しくありません。コロナ禍でドライバーの離職が進み、深刻なタクシー不足が起きているのです。

 そんな中、人口約2万人あまりの兵庫県養父市。過疎化が進むこの地域は国家戦略特区に指定されていて、5年前から先行的に自家用車で客を送迎できるライドシェアの1つ「やぶくる」を導入しています。「やぶくる」に登録する一般人ドライバーで養父市に住む西垣勲一さんに話を聞きました。ライドシェアの依頼は月に30件ほど。利用者の大半が高齢者で、診療所や買い物への移動などに利用されるといいます。

 (西垣勲一さん)「(Qドライバーを始めたきっかけは?)地域の移動手段がどんどん少なくなっていくし、高齢者ドライバーの事故とかがちょうどニュースになっていて、地域のため人々のためみたいなところがあります。(Q移動中は会話も?)移動中はずっと昔話から花の話から最近の健康の話から全部聞かせてもらって」

 「やぶくる」の対象エリアはバスやタクシーでは採算が合わない山間部の関宮地区と大屋地区。地域内限定のため地域をまたぐ移動には使えません。利用者がタクシー会社に連絡すれば、近くにいる登録ドライバーに連絡が入り、利用者のもとに向かうという仕組みです。利用時間は午前8時~午後5時で、初乗りが2kmまで600円と一般のタクシーより3~4割ほど安くなっています。

 ドライバーとして地域を支える西垣さんですが実は別の本業があります。それは畳職人。配車の依頼が入ると畳職人からドライバーになるのです。乗車前は必ずアルコールチェックをします。

 【ビデオ通話でのアルコールチェックのやりとり】
 (西垣さん)「(息を機器に吹きかけ)はい、アルコールは0です」
 (タクシー会社)「はい、OKです」
 (西垣さん)「ではやぶくる運行に行ってきます」

 養父市が行うライドシェアの取り組みに街の人からはこのような声が聞かれました。

 「病院とか日常の買い物とか。私も足が悪いので、買い物して家まで荷物を持って帰るのが大変。便利なのはいいかと思います」

 その一方で西垣さんはまだまだ課題もあるといいます。

 (西垣勲一さん)「現状ではやはりボランティア、地域貢献という考えが強くないとできにくいかなという現状です。車の維持管理・ガソリン・保険、全て出しています。本当に収入目当てではできない。『やぶくる』をすることが運転手にとって良いことになるような仕組みをもっと作っていくべきかなと思います」

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