いつ誰が置いたのか「勝手プランター」 ラブホテル前路上に103個のミステリー

「路上に持ち主不明の大型プランターが多数ある」。

 こうした通報が道路管理を担う大阪市にあった。場所は大阪・ミナミのラブホテルやビジネスホテルが立ち並ぶ一角。その数は計103個で、中には総重量が100キロ前後のものもあり、道路の不正使用にあたるとして、市による撤去騒動に発展した。市は持ち主捜しを進めたが、分からないまま。誰が何の目的で置いたのか、謎が深まっている。

今月4日午前。ヘルメットをかぶり、作業服姿の市建設局津守工営所の職員約20人が、大阪メトロ四つ橋線なんば駅近くのホテル街の一角に集まった。

ホテル前の歩道には、街路樹の間を埋めるようにプランターが並ぶ。ホテル西側に61個、東側に42個が、それぞれ約30メートルにわたって整然と置かれていた。

プランターのうち、大きい物は縦横約70センチ、高さ約50センチで、植えられた木を含む高さは3メートルにもなる。重さも50~100キロあるという。

職員らは数人がかりでプランターを台車に乗せてトラックに積み込み、約6時間かけて全てを撤去した。

「誰かが世話をしていたはず」

ホテル西側は新駅整備工事に伴って駐輪場を移設する候補地になっていた。ゆえに今春、鉄道会社が道路を管理する市に通報し、事態が発覚した。

これを受けて、市は周辺の聞き取りに乗り出した。ラブホテルやビジネスホテル前の路上だけに出入り口の目隠し目的が濃厚だが、プランターの数や大きさから推測すれば、費用もそれなりにかかるとみられる。

現在のホテルのオーナーに確認したところ「前のオーナーのときからあり、われわれの物ではない」という趣旨の回答で、有力な情報は得られず持ち主の特定には至らなかった。

このため市は道路の不正使用にあたるとして、9月中旬、現地に勧告文を掲示。持ち主に対して同月26日までに名乗り出るか、プランターを撤去するよう呼びかけた。

だが、期限までに持ち主は現れず、プランターもそのままだったため、道路法に基づき撤去を決めたという。一方で、市の担当者は「撤去の際もプランターの木の葉が青々と茂っており、誰かが世話をしていたはず」とみている。

相次ぐ引き取り希望も…

同様の事案は他にもある。同市大正区と浪速区、西成区を管轄する津守工営所では、おおむねこの1年間で道路の不正使用を約550件把握し、うち約300件を撤去。落下物や放置された家電製品といったごみ類、道路標識や電柱への貼り紙、持ち主不明の植木鉢などの植物類が目立つ。

とはいえ、今回のプランターほどの規模は異例だ。103個のプランターは現在、市内のある場所でまとめて保管。定期的に水やりをするなどし、枯らさないようにしている。

撤去の様子などが報じられたことで、市内だけでなく他府県の個人や企業からも引き取りを希望する声が相次いでおり、約30件に上っているという。

だが、ネックとなりそうなのがその重さ。ある職員は「この重さでも、(運送費などを)自腹で引き取りに来てくれるような人はいるだろうか」と懸念を示す。

引き取りを希望する声が寄せられた点も踏まえ、市はプランターの今後の扱いについて検討。希望者への無償や有償譲渡のほか、廃棄処分などを中心に、可能な限り費用を抑える方法を模索している。(吉田智香)

タイトルとURLをコピーしました