自民党税制調査会は23日、非公式の幹部会合を開き、岸田文雄首相が検討を指示した所得税減税の議論を事実上スタートさせた。今後、一定額を納税額から差し引く「定額減税」を中心に具体的な議論を深め、年末に決定する2024年度の税制改正大綱に盛り込む。 【写真】卒アルでキリッ 開成高校時代の岸田青年 会合は宮沢洋一会長、林芳正前外相、加藤勝信前厚生労働相らが出席し、非公開で行われた。財務省幹部も出席しており、所得税など税制全般についての説明を受けたとみられる。出席した幹部の一人は「(税制や予算などの)全般的な議論をした」と話した。 自民党の萩生田光一政調会長が20日、防衛力強化に充てる財源となる法人、所得、たばこの3税の増税開始を25年以降に先送りする考えを改めて示したことから、この問題との整合性も検討項目になりそうだ。 さらに賃上げや国内投資に積極的に取り組む企業向けの減税もテーマとなる。 ◇「定率減税」との違いは 所得減税の方法は、給与などから算出された所得税額から一定額を差し引いて税負担を軽減する「定額減税」と、所得税額から一定割合を差し引く「定率減税」がある。 定額減税は、所得にかかわらず一定額を差し引くため、低所得者でも等しく税負担を軽減できる特徴がある。ただ、非課税世帯には差し引ける所得税がなく恩恵を受けられないため、今回の経済対策では、対象世帯への現金給付の検討が進められるとみられる。 一方、定率減税は低所得者よりも、所得税額が多い高所得者の方が受けられる恩恵が大きい特徴がある。 ◇早くても来春以降 政府は26日に政府与党政策懇談会を開き、所得減税などについて、より具体的な指示を自民、公明の両党に出す。自民など与党税調はその内容を踏まえ、今後議論を進める。 ただ実際の減税は税調の議論を経て、その後法改正が伴うため、早くても来春以降となる。今、足元の物価高騰で悩んでいる人の対策としては時間がかかりすぎるとの指摘がある。 また、サラリーマンは所得税が源泉徴収され、給与から天引きされている。せっかくの減税にもかかわらず、実感を持ってもらいにくいとの懸念がある。 与党幹部からは早くも「わざわざ時限的な減税のために制度設計するのか。給付金のほうが分かりやすいのではないのか」などの意見が出ている。 自民税調では、減税の経済効果などを今後慎重に検討し、制度設計を進めていくとみられるが、減税や給付金に積極的な議員がいる一方、所得減税の効果に疑問を持つ議員や、財政再建の観点から問題とする議員も多い。税調は難しい議論をまとめることになりそうだ。【中島昭浩、浅川大樹、藤渕志保】