なぜ? 東京モーターショー、55年ぶりの改名 「ジャパンモビリティショー」になったワケ

「ジャパンモビリティショー」に改名

ジャパンモビリティショー2023に出展されるコンセプトカー。

2023年10月25日秋晴れのもと、2019年秋から4年ぶりとなるジャパンモビリティショーが東京ビッグサイトにて開幕した。 【写真】未来感! 日産からはジュークやエルグランド彷彿コンセプト4台【事前公開】 (44枚) 25日と26日が報道関係者を中心とするプレスデー、27日が特別招待日で一般公開は28日(土)から11月5日までの10日間となる。 主催者の発表によるとジャパンモビリティショーは以下のように紹介されている。 「新生JAPAN MOBILITY SHOW 2023は、自動車業界の枠を超えて、他産業やスタートアップ、来場されるお客さま含め、日本の未来を新しい仲間と一緒に創っていくショーです」 「最新の参加社数は8月発表時からさらに増え、前回開催のTOKYO MOTOR SHOW 2019における192社の出展・参加を大きく上回る過去最高の475社を突破」 「自動車業界だけでなく、他産業もスタートアップも多く参加し、『フルモデルチェンジ』を体現する今までにない企画を多く実施します」 出展社の数が前回192社から475社に2倍以上に増えたのは驚くが、増えた分の多くは次世代モビリティ関連企業やスタートアップ企業である。 数のパワーが凄いが、もちろん、東京モーターショーに長年出展してきた伝統メーカーも史上最大規模のブースで出展する。 主な出展社は以下の通り。 ■乗用車 スズキ/スバル/ダイハツ/トヨタ/日産/ホンダ/マツダ/三菱/レクサス/ソニー・ホンダモビリティ BMW(Germany)/BYD(China)/Mercedes-Benz(Germany) ■二輪車 カワサキ/スズキ/ホンダ/ヤマハ/aidea ■商用車 いすゞ/日野/三菱ふそう/UDトラックス このほか、車体メーカーや部品・機械器具メーカーなどを加えて合計475社が出展する。

1954年 第1回全日本自動車ショウとして始まった

1954年に第1回全日本自動車ショウとして始まり、1964年の第10回開催時に東京モーターショーの名称に変更された。なぜ、この年に名称が変わったのか? これには納得できる理由がある。 翌年1965年4月に乗用車の輸入自由化が予定されていた関係もあって、第10回のショーに海外メーカー3社(3社がどこなのか?今調べています)が初出展することになった。 国際的なイベントにシフトしていく方針が決まったことで、イベントの名称も「全日本」→「東京」/「自動車ショウ」→「モーターショー」に変更となったのである。 ちなみに、この年に初めて報道関係者のためのプレスルームが開設されており、国際ショーへの本格的な一歩を踏み出したとされる。 以来、東京モーターショーという名称は2019年の第46回まで55年間使用されてきた。 なお1973年開催の第20回までは毎年開催されていたが、73年に起きた第一次オイルショックにより自動車産業は大きな打撃を受け、モーターショーの存在意義までが問われる事態となってしまった。 そこで1974年のショーは中止。1975年以降は隔年開催となった。 2000年以降は乗用車と商用車を1年ごとに開催していたがこれも2005年で終了。 以降は以前に戻って隔年開催となった。記憶に新しいが、TOKYO2020やCOVID-19の影響で2021年には東京モーターショーの開催はなかった。

「モビリティ」という名前に違和感?

気になっている人も多いと思うが今回から慣れ親しんだ東京モーターショーからジャパンモビリティショーという名称に変わっており、これに対してかなり違和感を持つ人もいるようだ。 実際、55年にわたって使用されていた東京モーターショーの名称が消えたことも非常に寂しい。「モビリティショー」という名称じたい、なんだか別のショウになったようで残念だ。 少なくとも筆者の周囲にいる昭和~平成初期のクルマ好きにとっては激しい違和感を覚えるようだ。 ジャパンモビリティショーという名前について、クルマ好きが集まるコミュニティで聞いてみたところ、 ・政府の方針だろうから、仕方ない ・モビリティという言葉がそもそも嫌いなので違和感しかない ・なぜ改名する必要があるのか ・日本経済、日本自動車産業の凋落の象徴 ・無理やり元気にふるまおうとしている感じが嫌 ・運転が危ない「電動キックボード」を想起させる などなど、少々過激なものもあるがこのような意見が渦巻いていた。 なぜ東京モーターショーからジャパンモビリティショーに変わったのか? これが正式発表されたのは約1年前の2022年11月のことであった。 この時の発表では、「モビリティの枠を超えて他産業やスタートアップなど新しい仲間も募り、次回の東京モーターショーを新たに『JAPAN MOBILITY SHOW 2023 (ジャパンモビリティショー)』として、東京ビッグサイト全館(江東区・有明)を中心に開催することを決定しました」 「今回も、臨海副都心エリアや東京ビッグサイト近隣のエリアでの拡充開催も検討しており、様々なプログラムを実施し、100万人の来場者のみなさまがより一層楽しめるイベントを目指します」として、名称変更と共に開催概要も明らかにされた。

イメージ一新とオールインダストリー意識

主催団体である日本自動車工業会では「みんなで一緒に未来を考える場」をショーのコンセプトとしている。 モビリティ産業がペースメーカーとなり、他産業やスタートアップも一緒になって、お客様との双方向で未来を考える場を目指しているそうだ。 そして、各方面への取材を通して見えてきた改名の理由は以下のようなことではないかと筆者は推測している。 ・若者層、ファミリー層の関心をひくために新しいイメージを持つ名前に変えてイメージ一新。 ・年々、海外メーカーを中心に出展社が減り、それに伴い来場者も減っている昨今。若者やファミリー層に足を運んでもらうべく、古臭い? 東京モーターショーから新しいイメージを与えるジャパンモビリティショーに改名した。 ・日本経済の発展に向けて、基幹産業である自動車産業は中心に多様な産業との連携をイメージ。 ・業界を超えて日本の未来へ貢献を象徴するイベントとして「クルマだけじゃない」感をアピールする。モビリティ産業を核としてオールインダストリーで日本を元気にしていこうという願いが込められている。 ・2050年のカーボンニュートラルに向かって、これまでの「自動車」だけではなく、電動車、電動モビリティ、それらの関連分野を包括する多様な展示内容とする ところで、実はモーターショーやオートショーが入る名称を「モビリティ」に改名したショーは他にもある。

モビリティへの改名はほかでも

モーターショーやオートショーが入る名称を「モビリティ」に改名したショーは他にもある。 有名なところでは、ドイツ国際モーターショー(Internationale Automobil-Ausstellung、IAA)だ。 フランクフルトショーとしておなじみだったこちらのショーは、2021年には場所を移してミュンヘンでの開催となった。 これをきっかけに乗用車ショーが「IAAモビリティ(IAA MOBILITY)」という名称に改名されている。 また、ロサンゼルスで例年11月半ばに開催されているLAオートショー。こちらは、一般公開日は現在もLAオートショーという名称だが、なぜかプレス&関係者の日だけが「オートモビリティLA」に改名されている。 最後に。昨今、世界のモーターショーでもっとも活気がある場所と言えば、今や世界最大の自動車生産/輸出/販売国となった中国である。 筆者は近年、中国のモーターショーの取材に訪れているが、初めて行った2017年4月の上海モーターショーでは、中国車の劇的な進化を目の当たりにし大きな衝撃を受けた。 当時はまだレンジローバーのコピー車である「LANDWIND」やポルシェマカン激似の「ゾタイSR9」などの展示もあったが、翌年の北京では完全に姿を消した。 また、日本市場や東京モーターショーから撤退したフォードやGM、リンカーン、BUICKなどのアメリカブランドも巨大なブースを構えて華々しい演出で多くの来場者を楽しませていた。 とにかくどこのブースも来場者が多く、熱気も凄かった。バブルのころの東京モーターショーみたいだなあとしみじみ、当時を思い出してしまった。 こちらは「モビリティ」の名に変更することなく、当面の間は「モーターショー」として盛り上がって行くのだろう。少し羨ましさを感じた。

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