2年前から理由もなく突如もの悲しい気分になり、夜もよく寝付けなくなったという40代半ばの男性会社員。30代の時は精力的にこなしていた仕事への意欲もわかなくなった――。女性だけでなく、男性にも起こる更年期障害の例だ。だが、更年期障害への理解の乏しさから対処法が「寝るだけ」という男性も多いようだ。
更年期は女性の場合、閉経前後の約10年間を指し、女性ホルモン分泌量の低下により、症状が出やすくなる。男性の場合は40歳以降くらいから、男性ホルモン「テストステロン」の減少により、性欲の低下▽疲れやすさや気分の落ち込み▽集中力や記憶力の低下▽イライラ――などの不調が生じる。全ての人に症状が出るわけではなく、加齢に伴う症状だと思い更年期障害とは気がつかないケースもある。
漢方薬大手のツムラは10月、現在や過去に更年期症状が出た経験を持つ全国の40~60代の男女各400人を対象に実施した調査結果を発表。症状に「対処した」とした男性は33・5%で女性(41・0%)に比べ少なかった。対処内容も、女性は「病院を受診」(58・5%)が最多で積極的な行動が目立ったのに対し、男性は「休息・睡眠時間を増やす」(49・3%)が最多だった。症状を自覚しながら対処をしていない人に理由を問うと「対処法をどのように調べればいいかわからないから」と回答した男性が34・3%で、女性に比べて約20ポイント高かった。
対処方法がわからない結果「寝るだけ」となっている男性も一定数いるとみられるが、男性の更年期障害に詳しい順天堂大医学部の堀江重郎教授は「必要な対処法をとらない限り、自然に症状が改善することはない」とする。泌尿器科や男性更年期専門外来などを受診し、採血検査で男性ホルモン値が低ければ注射で補充して症状を緩和させるのが一般的だ。
日常生活では、男性ホルモンを作るために筋トレをすることも有効だ。ボランティアや仲間作りを通じて社会的な居場所を見つけるのもホルモンの分泌増につながるという。【町野幸】