【ソウル=小池和樹】学術書「帝国の慰安婦」で元慰安婦の名誉を傷つけたとして、名誉毀損罪に問われた著者で韓国・世宗大の朴裕河名誉教授(66)の上告審で、韓国大法院(最高裁)は26日、罰金1000万ウォン(約110万円)としたソウル高裁判決を破棄し、審理を高裁に差し戻した。
大法院は著作内の表現について「学問的主張ないし意見の表明と評価するのが妥当」とし、「無罪の趣旨」で高裁に差し戻すとした。
この裁判では学術研究における言論と表現の自由などが争点になった。朴氏は「個人の名誉を毀損していない」などとして一貫して無罪を主張してきた。
2017年1月の1審判決では、検察が「虚偽」と主張した「日本軍と同志的な関係にあった」「自発的な意思で慰安婦になった」などとする表現について、名誉毀損にあたらないと判断した。本の出版は公共の利益のためだったと認め、「表現の自由を幅広く保障しなければならない」として無罪とした。
ただ、同年10月の控訴審判決では「元慰安婦らの社会的評価が低下することを認識しながら執筆した」と認定し、逆転有罪判決を言い渡した。
◆「帝国の慰安婦」=日本の帝国主義下での女性の人権侵害を描く一方、元慰安婦が「旧日本軍の性奴隷」という一面的な見方に疑問を示した学術書。2013年8月に出版され、日本でも翻訳本が14年11月に発刊された。韓国検察は同年6月に元慰安婦らの告訴を受け、元慰安婦らの名誉を傷つけたとして15年11月に朴氏を在宅起訴した。