理系に比べて低調な文系学部生の大学院進学について、文部科学省が現役学生の意向を調査したところ、進学を考えていない人の約48%が「就職が心配」を理由に挙げたことが分かった。理系学生で同じ回答を寄せたのは約26%だった。学生が文系大学院を出た後のキャリア形成を不安視している実態が明らかになった。 【写真】大学卒業直後に起業 1年目から黒字の経営者 文科省によると、SDGs(持続可能な開発目標)や生成AI(人工知能)といった新分野に注目が集まる中、時代に即した法制度や倫理面に関する研究が求められるようになり、人文・社会科学系の専門知識がある人材の養成を大学に期待する声も高まっている。 ただ、学部卒業後の進路を見ると、理工農学系は3人に1人が修士課程へ進むのに対し、文系は20~30人に1人の割合で、進学率の低さが課題とされている。 調査は、現役学生のニーズを探るため、文系大学院を置く国内大学の文系学部4年生らを対象に実施し、約1万3000人に答えてもらった。文系と比較するため、この対象校から無作為抽出した大学の理系学生約3000人の回答も得た。 結果を分析すると、理系の約59%は大学院進学を希望する一方、文系は約15%にとどまった。また、進学意向のない文系学生に大学院へ進まないことを決めた時期を尋ねたところ、半数以上が「そもそも考えたことがない」と答えた。 文系・理系双方で進学を考えていない学生にその理由を尋ねると、文系は「卒業後の就職が心配」との項目に「とてもあてはまる」「ややあてはまる」とした学生が約48%となり、理系(約26%)の倍近くに上った。進学予定の学生を含めた全体に対し、大学院のイメージを聞いた設問でも「学部卒より就職に有利」の項目に「そう思う」「どちらかと言えばそう思う」とした文系学生は約43%にとどまり、理系(約85%)と差が大きく開いた。 調査結果は26日に開かれた中央教育審議会(文科相の諮問機関)部会で示された。委員からは「卒業後の雇用条件を向上させることが大切。産官学が一体になって取り組む必要がある」などの意見が上がった。【李英浩】