登録者数238万人の海外ユーチューバー、「Fidias」(フィディアス)が新幹線で無賃乗車したり、宿泊を装ってホテルの朝食を「食い逃げ」したりする動画を公開した問題は、海外のメディアでも相次いで報じられている。
多くの記事で指摘されているのは、この事案が別の外国人「迷惑系」ユーチューバーの逮捕から1か月後に起きたという点だ。オーバーツーリズムが背景にある、との見方もある。
削除された動画のワンシーン。国外メディアも相次いで報じた
ファロワー以外からの反応は「圧倒的に否定的」
問題の動画は10月21日に「無料で日本中を旅しました。」と題して公開された。その内容に批判が相次ぎ、24日になってフィディアスはコメント欄で謝罪。25日までに、ユーチューブのコミュニティーガイドラインに違反しているとして削除されている。
この事案は、英語圏でも相次いで報じられた。英ガーディアン紙は、フィディアスのフォロワーは「彼の大胆さに拍手を送った」とする一方で、
「他のソーシャルメディア利用者からの反応は圧倒的に否定的で、安全とおもてなしに対する日本の評判を悪用していると非難する声もあった」
と指摘。英BBCは、
「日本ではマナーが非常に重視され、無礼とみなされる悪ふざけは嫌われる」
とした。
多くのメディアで指摘されているのが、類似事案が起きたばかりだという点だ。例えばAFP通信は、次のように指摘した。
「この事案は、日本の警察がジョニー・ソマリとして知られる米国のライブ配信者を建設現場への不法侵入の疑いで逮捕した1か月後に起こった」
ガーディアンは
「日本での生活の様々な側面を掘り下げた人気のユーチューブ・アカウントは膨大な数に上るが、彼らの来日を利用してネット上で悪名を馳せたインフルエンサーも少なくない」
としている。
過去にも海外「迷惑系」が問題化
両者が指摘しているのは、9月に「ジョニー・ソマリ」ことイスマエル・ラムジー・カリド容疑者が建設現場に不法侵入したとして建造物侵入の疑いで逮捕された件だ。それ以外にも同容疑者は多数の迷惑行為を繰り返しており、10月には牛丼チェーン「すき家」で大音量の音楽を流したとして、威力業務妨害の疑いで再逮捕されている。
17年には、米国のユーチューバー、ローガン・ポール氏が山梨県・青木ヶ原で自殺者とみられる遺体の動画を投稿。笑みを浮かべたり叫んだりしたりしたことが死者への敬意を欠くとして批判が相次いだ。ポール氏は謝罪し動画は削除されたが、それまでに数百万回再生された。この件以外にも多数の迷惑行為が問題視された。
ガーディアンは、前出の「日本の評判を悪用していると非難する声」が出ていることに関連して、
「人気の観光スポットでの過密状態や、路上での飲酒やゴミのポイ捨てといった悪質な行為を受け、政府はオーバーツーリズムを減らすための対策を練っている。鉄道運賃の大幅な引き上げや、あまり知られていない地方への誘客キャンペーンなどだ」
とも指摘している。一連の事案の背景にはオーバーツーリズムもあるとみているようだ。
10月18日の観光立国推進閣僚会議では、岸田文雄首相が
「インバウンドの宿泊先は3大都市圏が7割で、一部の地域や時間帯によっては、過度の混雑やマナー違反による地域住民の生活への影響や、旅行者の満足度の低下への懸念も生じている」
と発言している。この発言も、複数のメディアが伝えている。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)