広域水道料 見直し議論へ 宮城・白石市が一石「脱退」も示唆

宮城県南や仙台圏の17市町に水道用水を供給する仙南・仙塩広域水道は近く料金見直しの議論に着手する。きっかけとなったのは白石市の訴え。「かつての計画水量が過大だった」と異議を唱え、脱退も示唆して見直しを迫る。
(白石支局・岩崎泰之)

[仙南・仙塩広域水道]仙台、塩釜、白石、名取、角田、多賀城、岩沼、富谷、蔵王、大河原、村田、柴田、亘理、山元、松島、七ケ浜、利府の17市町で構成。県管轄で、みやぎ型管理運営方式で「みずむすびサービスみやぎ」(仙台市)が管理する。村田、柴田、七ケ浜は全て広域水道の水を使っている。仙台市は全体の約4割の水を使っているが、計画水量の約2割にとどまる。

過大な計画水量が重荷に

 17市町の水道料金はそれぞれ計画水量に基づく基本料金と使用料金、施設管理費などの合算で決まる。白石の1カ月当たりの家庭料金は2035円(基本水量10立方メートル)と川崎町の2420円より安いが、大河原町の1650円より高い。

 計画水量が設定されたのは水源となる七ケ宿ダム(七ケ宿町)が建設される前の1976年。当時の市は人口が将来的に4万人台から10万人になると見込み、1日当たり2万4700立方メートルとした。仙台市を除く16市町で最も多い数字だ。

 実際は人口が3万1500人前後まで減少した。水の供給量実績は1日当たり3684立方メートルと、計画水量の約15%に過ぎない。
「富谷より高い」

 市は毎月、広域水道に基本料金を約2200万円支払っている。仮に計画水量が半分になれば年間1億円程度を圧縮できる計算だ。

 人口約5万2000人の富谷市は1日当たり7440立方メートルの水を使用しているが、計画水量は1万1500立方メートルで、家庭料金は10立方メートルで1カ月1474円に収まっている。住宅が集まる都市部の富谷と山間部が多い白石では事情が異なるが、白石市幹部は「ダムに一番近い白石が、遠く離れた富谷より料金が高いのはいかがなものか」と不満を漏らす。

 山田裕一市長は8月、県南の首長らが集まる県南サミットで「広域水道建設の企業債(建設費)の償還は終了した。新しい計画水量による負担に移行すべきだ」と訴え、議論が進まない場合は「広域水道を脱退し自己水源とする」とも語った。会合に出席した伊藤哲也副知事は「3カ年をめどに意見集約を図る」と議論の推進を約束した。

 市はこれまでも見直しを要望してきた。2019年度には県と17市町で協議入りの覚書を交わしたが、新型コロナウイルスの影響で会合が開けず、進展しなかった。今年8月に結び直した覚書には「見直しの議論を深める」との文言が入った。
自己水源2ヵ所
 市内は自己水源が2カ所あり、広域水道から買う水は年々減り、現在は全体の約35%となっている。人口減少が続けば自己水源で全てをまかなえるが、「選択肢は多い方がよい」(市上下水道事業所)と現実的には脱退を考えていない。老朽化した水道管の更新もあり、計画水量の見直しを今後の料金アップの抑止などに反映させたい考えだ。

 県は週明けに受水市町担当課長会議を開き、24年度から本格議論に入り、3年以内に結論を出す方針。

 県企業局は「昔の計画をいつまでも引きずるのはどうかという思いはある。着地点を探す努力をする」(水道経営課)と話す。

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