通塾率低いのにどうして? 全国学力テストで宮城・大河原の小6正答率が全国トップクラスに<リポートみやぎ>

宮城県内の小中学生の学力向上が課題となる中、大河原町は全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)で全国平均を上回る「優等生」として知られる。特に本年度は小学6年の平均正答率が全国トップ級に達し、周囲を驚かせた。背景を探ると、児童の自主性を引き出す学校教育や、家庭との連携などの特徴が浮かび上がった。(大河原支局・伊藤恭道)

一方的指導から話し合い重視に 

 「75×5×2、5×2×75。4人グループで二つの式の同じ所と違う所を気付いただけボードに書いて」。9月末、大河原小であった3年生の算数の校内研究授業で教師が呼びかけた。

 「計算する順番が違う」「三つの数と答えは一緒」「先に5×2で10を作れば暗算できるよ」「すごいね」。児童は笑顔で意見を次々と出し合い理解を深めていった。

 町教委が進める「自主性尊重型」の授業例だ。2021年、従来の一方的な指導をやめ、児童が積極的に考え話し合って学びを深めるよう小学校の授業改善に着手。企業経営で使われ、計画、実施、評価、改善の「PDCAサイクル」を重視した授業も取り入れて教師の指導力向上を図った。

 町教委が教師指導のため招聘(しょうへい)する宮城教育大大学院の市川啓准教授は「点数を上げる小手先の技術でなく、授業改善を正攻法で追求し続けているので学習内容が定着する子が増えた」と教師の努力を評価する。

家庭と連携し学習の進捗確認

 学校が家庭学習に積極関与するのも特徴だ。学力テストと同時に実施したアンケートでは、町内の小学6年生が学習塾に通う率は27・0%で全国平均(45・6%)や県平均(36・7%)より低い一方、家庭で1時間以上学習する割合は82・7%で、全国(57・1%)と県(54・5%)を大きく引き離した。

 大河原小6年の娘を持つ母親は「学習の手引き(指示書)があり、漢字や自主学習、苦手部分の特訓、週末の課題など宿題量も充実していて助かる」と話す。プリントには親のコメント欄があり、学校と双方向で学習の進捗(しんちょく)や生活態度を確認し合えるという。

 町教委は「ゲームやインターネットは午後7時半まで、1日90分が目安」とルールも定める。ある教師が「8、9割の家庭で守っている」と話すように、スマートフォンへの依存を抑え学習時間を確保しているのもポイントだろう。

 地道な取り組みが全国学力テストの平均正答率の飛躍につながった。通常、市町村ごとの結果は公表されないが、町教委は町議会9月会議で、須藤慎議員の一般質問に詳細を明かした。現行のテスト基準になった19年度以降の推移は表の通り。今回は国語が75・0%で都道府県別で全国首位の秋田、石川両県(72・3%)を超え、算数でも67・0%とトップの東京都や石川県と並んだ。県内では平均点が高い仙台市を大きく引き離した。

 鈴木洋教育長は「複数の要素が合致し急激に伸びた。対話的に学んで級友を尊敬し合って分かる喜びを持てば学習意欲は高まるほか、不登校やいじめを減らす効果も期待できる。異動があっても教師全体の質が維持できるように努めたい」と気を引き締めた。

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