東北の1等米比率、過去10年で最低の69.6% 9月末現在、高温障害や水不足、大雨背景に

東北農政局は31日、2023年産米の検査結果(9月末現在、速報値)を公表した。東北の1等米比率は69・6%。前年同期を25・1ポイント下回り、過去10年間で最低だが、全国平均(59・6%)を10・0ポイント上回った。記録的な猛暑による高温障害や水不足、大雨被害を背景に全県で前年同期より低下し、産地や品種で下落幅のばらつきが目立った。

 6県別の1等米比率は青森68・9%(前年同期比23・3ポイント減)、岩手92・5%(4・3ポイント減)、宮城84・0%(13・4ポイント減)、秋田62・6%(30・0ポイント減)、山形54・7%(41・7ポイント減)、福島76・2%(19・1ポイント減)。岩手、宮城の太平洋側に比べ、秋田、山形の日本海側で落ち込んだ。

 農政局によると、検査の進捗(しんちょく)率は約3割。担当者は「7月以降の高温による影響で粒の白濁、虫害による着色が見られた。地域によっては少雨も影響している」と分析した。

 主な品種の1等米比率は表の通り。最も高かったのは宮城のだて正夢で98・3%(1・6ポイント減)。岩手の銀河のしずくが96・2%(3・1ポイント減)、山形の雪若丸が91・1%(7・0ポイント減)など高級品種が小幅な低下で踏みとどまる中、青森の青天の霹靂(へきれき)は55・8%(38・9ポイント減)で明暗が分かれた。

 秋田のあきたこまち61・8%(31・2ポイント減)、山形のつや姫63・0%(36・2ポイント減)が苦戦。宮城のササニシキ43・6%(50・6ポイント減)、山形のはえぬき43・2%(53・0ポイント減)も振るわなかった。

 6県の2等米比率は28・7%(23・8ポイント増)、3等米比率が1・5%(1・2ポイント増)。検査したコメの量は43万9051トン。

 2等以下とされた主な理由は、白濁などの形質が75・4%、虫害による着色が15・5%、ひびが入る胴割れなどが5・6%。食味は特に変わらないという。

 次回の検査結果は11月末に発表される予定。

消費者ニーズ分析重要 東北大大学院農学研究科 冬木勝仁教授に聞く

 9月末時点の東北の1等米比率が過去10年で最低となった。1等米比率が下がると、農家にとって収入の打撃となる。気候変動、高齢化や資材高騰が重なる中、持続可能な稲作経営の課題について、東北大大学院農学研究科の冬木勝仁教授(農業市場学)に聞いた。

 高齢化が進む中で、全国平均と比べても東北の農家は健闘した方ではないか。

 コメ農家が生き残るためには、どんな需要があるか把握することが重要だ。主食用や外食向けの業務用だけでなく、多様な加工品に活用できる米粉用にもニーズがありそうだ。新型コロナウイルス禍で、米国向けのパックご飯の輸出量が増えたデータもある。

 生産者の高齢化は避けて通れない。集落営農をベースとして組織を法人化すれば、担い手を確保できると考えている。都市部には農作業に興味のある労働者が一定数いる。専門知識がなくても担える農作業を手伝ってもらうことも可能だ。

 消費拡大につなげるため、流通にも着目したい。トラック運転手の残業規制強化に伴う「2024年問題」もあり、物流業界の人手不足が懸念される。地産地消が理想的だが、コメの主産地である東北は地元の消費量より生産量が上回る。30キロの米袋ではくフレコンバッグで運ぶなど、効率的な輸送の仕組みを改めて考える時期に来ている。

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