タイ人観光客を東北へ 消費旺盛、有望なインバウンド市場として期待

旅行者数9年で13倍 四季に興味、食べ物の相性も◎

 紅葉が見頃を迎えた10月下旬、タイの旅行会社4社が仙台市太白区の秋保大滝を訪れた。ごう音をたてながら下る高さ55メートルの名瀑(ばく)と、赤や黄に染まった山々。「紅葉がないタイにとって、色鮮やかな風景はとても魅力がある」。参加した旅行会社アサヒトラベルのミツモト・カノックポン社長(51)は写真や動画に光景を収めてこう語った。

 ツアーは東北への誘客を目的に東北観光推進機構が企画した。紅葉をメインに4泊5日で南東北などを巡り、旅行商品作りを働きかけた。ミツモト社長は「紅葉の名所を温泉と組み合わせ、経営者や医師といった中高所得者層向けの商品にしたい」と語った。

 行政も誘客に力を入れる。郡和子仙台市長は2~5日、宮城、山形両県の観光関係者ら約40人とバンコクを訪問。現地でのトップセールスは今春に続き今年2回目で、政府観光庁やタイ国際航空の関係者と会談し、コロナ禍で運休した仙台―バンコク線の再開を働きかける。

 タイに集まる熱視線の背景には、成長力あるインバウンド市場への期待感がある。東北観光推進機構によると、コロナ禍前の2019年にタイから東北6県を訪れた旅行者は10万4550人。東日本大震災前の10年と比べて約13倍と大きく伸びていた。

 東北観光推進機構が三井住友カードから得た消費データを分析したところ、他のアジア諸国と比べ一人当たりの消費額が大きいことが分かった。高価格帯の宿を選ぶ傾向があり、土産品の購入やフルーツ狩りなどにかけた金額が大きかった。紺野純一理事長(73)は「タイの人々は四季折々の自然や冬の雪、おいしいフルーツなど東北が強みとするコンテンツを好んでいる。東北との親和性は非常に高い」と市場の伸びしろに期待する。

 誘客に向けた環境も整いつつある。タイ・ベトジェットエアは来年1月31日から、仙台―バンコク間で定期チャーター便を週3便運行する計画。観光関係者は、19年まで国際定期便の仙台―バンコク線を運航していたタイ国際航空の復便も早期に実現させようと、現地でのセールスや旅行会社への働きかけを継続する。

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