ヨドバシ効果で仙台駅東が活況 人流、市中心部に回帰の兆し

家電量販店大手ヨドバシホールディングスの複合商業ビルが6月に開業したJR仙台駅東口でにぎわいが増し、仙台市中心部の人の流れに変化が生まれている。かつて「駅裏」と呼ばれた東口は再開発が進み、人を引き寄せる都市力を象徴する拠点になりつつある。商店街関係者からは、再開発が停滞する駅西口への波及を期待する声が上がる。
(報道部・門田一徳、池田隆平)

 「プロ野球東北楽天の試合がある日もない日も人が増えた。街ががらりと変わった」

 仙台駅東まちづくり協議会の松坂卓夫理事長(65)がビル開業から5カ月の「ヨドバシ効果」を明かす。周辺ではコンビニや飲食店のテナント需要が増え、マンション建設も続く。

 ヨドバシ仙台第1ビルでは6月、核テナントの家電量販店とファッション系のフロアがオープン。7月に飲食フロアが営業を始め、8月には市道を挟んで立つヨドバシ仙台第2ビルに食品スーパーが開業した。

 両ビルを管理運営するヨドバシ建物仙台事務所によると、1日当たりの来店客は平日で最大2万人、土日祝日は4万人を超える日もあった。菅原英輔所長(49)は「飲食店フロアの空きスペースへのテナント誘致をさらに進め、一層の集客を目指したい」と強調する。

 ヨドバシ効果は、携帯電話の位置情報を基にしたNTTドコモのモバイル空間統計のデータにも表れている。日曜午後2時台の人出を東口を含む仙台駅周辺で比較すると、10月22日は、仙台第1ビル開業前の5月28日から28・6%増え、大幅に伸びていた。

 新型コロナウイルスの5類移行に伴い人出は市街地全体で増えているが、駅周辺の増加幅は、電力ビルを含む一番町3丁目周辺(15・2%)、駅西口北側の名掛丁周辺(7・8%)を大きく上回った。

 駅西口の商店街関係者も東口の活況を好意的に受け止めている。仙台駅前商店街振興組合の関係者は「エスパル仙台東館や仙台パルコ2といった商業施設も来店客が増え、相乗効果が出ている」と歓迎する。

 背景には、東口と比べて西口の再開発に目に見える進展がない事情もある。2017年に閉店したさくら野百貨店仙台店の跡地や、再開発が検討されている商業施設EDEN(エデン)とGSビル跡地に動きは見られず、話題性に乏しい。

 市中心部は2000年代から郊外の大型商業施設に客足を奪われてきた。近年は仙台駅周辺で商業施設が拡充され、拠点性を増して回復の兆しがある。東口で先行する再開発は、さらなるまちなか回帰や、県内外からの集客拡大の呼び水になる可能性を秘める。

 名掛丁商店街振興組合の安住浩一理事長(65)は「一つの商店街で何かをできる時代ではない。駅東と駅西の商店街が切磋琢磨(せっさたくま)して市中心部に多くの人を呼び込む魅力づくりを考えたい」と話す。

仙台駅東の飲食とスーパー、にぎわいをけん引 駅西は売り上げ減も

 家電量販店大手ヨドバシホールディングスの複合商業ビルが開業したJR仙台駅東口(仙台市宮城野区)でにぎわいを引っ張るのが、新ビルに設けられた飲食店フロアと、向かいのビルに出店した東北初進出の食品スーパーだ。東口の潜在需要を取り込み、西口からも広く人を呼び込む。

 10月22日午前10時前の東口。歩行者専用デッキに100人近い行列ができた。ヨドバシ仙台第2ビルに入る食品スーパー「ロピア仙台ヨドバシ店」の開店を待つ客だった。先頭にいた青葉区の女性会社員(52)は「いつも混んでいるので早い時間を狙った。国産肉が割安で魅力的」と話した。

 東口は2011年に西友が閉店し、スーパー空白地帯となった。マンションやオフィスビルの開発で昼夜とも人口が増え、食料品などの需要が高まっていた。

 目新しさもあり、商圏は山形など隣県に広がる。首都圏を中心にロピア約80店を展開するOICグループ(川崎市)によると、仙台ヨドバシ店は8月末のオープンから好調が続く。浜野仁志執行役員管理本部長(39)は「総菜は仙台が一番売れている」と強調する。

 新しいヨドバシ仙台第1ビルの飲食店フロア「オイシイもの横丁」には居酒屋など16店が並び混雑する。ホヤ料理の「まぼ屋」を営む飛梅(仙台市)の松野水緒社長(43)は「売り上げは予測の1・5倍。夏は連日のようにホヤが完売した」と手応えを語る。

 ロピアとオイシイもの横丁の活況は、駅の東西で食料品販売と外食の勢力図に影響を与えつつある。地元関係者によると、西口では食品売り場の売り上げが減った商業施設もある。

 仙台朝市にある丸米精肉店の関場浩司社長(37)は「影響はあると思う。希少品の販売、おまけサービスなど朝市らしい顔の見える商売で対抗したい」と話す。

 名掛丁周辺や商業施設EDEN(エデン)でも客の流出を実感する飲食店が少なくない。ある店主(46)は夏以降に常連客が減ったと明かし「物価高や人手不足もあり、価格で競ったら無理が出る。接客やサービスを磨いて固定客を確保したい」と対策を練る。

「仙台まちなか支局」を開設

 河北新報社は3日、仙台市中心部の話題を発信する取材拠点「仙台まちなか支局」を開設しました。2月にスタートした連載「Re 杜のまち」と連動し、記者が市中心部をこれまで以上に歩いて現在進行形の動きを掘り下げます。

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