ふるさと納税制度で、2022年度に人口1人あたりの寄付受け入れ額が多かった上位50市町村の「特定目的基金」の残高(21年度末)が1905億円に上り、17年度末比で倍増していることが、読売新聞の調査でわかった。財政規模に対し、寄付金が多すぎることが理由で、多くが基金の具体的な使途を決めないまま積み上げ続けている。急増する寄付金を有効活用できていない実情が浮かぶ。
基金は自治体の貯金にあたり、▽減収に備える「財政調整基金」▽地方債の返済に充てる「減債基金」▽特定事業のための「特定目的基金」――がある。寄付金の多くは、特定目的基金に積み立てられている。
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総務省の公表データを分析すると、全1741市区町村の特定目的基金の21年度末残高は計8兆4857億円で、17年度末から6793億円(8・7%)増えていた。22年度に人口1人あたりの寄付額が多かった上位50市町村で見たところ、計1905億円で17年度末(計962億円)から98%増。全市区町村と比べ、伸び幅が際立っていた。
また、自治体の財政規模を示す地方税収と比較すると、50市町村は2年9か月分に相当する基金を積み立てていることになり、こちらも全市区町村(5か月分)を上回る規模だった。1人あたりの寄付額が229万円と最も多かった和歌山県北山村は、税収20年分以上の金額を積み立てている。
全国の自治体が受け入れた寄付総額は、22年度に9654億円に上り、3年連続過去最高を更新。50市町村は人口ベースで日本の0・4%にすぎないが、寄付総額の17%(1693億円)が集中している。
基金残高が増えているのは、財政規模に対し、寄付が多すぎるためだ。50市町村に取材したところ、具体的な使途予定を回答した自治体は7市町にとどまった。
総務省は「自治体には寄付金の使途を明確にするよう求めている。有効に使われていないのであれば問題だ」としている。