アメリカの消費者はEVよりもハイブリッド車を求めている

  • 2023年後半の今、電気自動車(EV)の未来に良い兆候はまったく見当たらない。
  • EVの窮地について、自動車メーカーもついに気づき始めた。
  • 業界の専門家や関係者は、ハイブリッドに焦点を当てる必要があると指摘する。

自動車メーカーが最新の電気自動車(EV)の需要を喚起しようと必死になる一方で、消費者は妥協案としてのハイブリッド車を求めている。

アメリカの消費者は、追加料金を支払ってでも利便性を高めようとする傾向がある。Uber、DoorDash、InstaCartといったアプリの成功からもそれは明らかだ。自動車業界では、同じ理屈がハイブリッド車にも当てはまる。ハイブリッド車が、EV完全普及へ向けて利便性の高い橋渡しをすることになるだろう。

まだ完璧とは言えない車にでも大金を投じるアーリーアダプター(早期導入者)としての富裕層にEVを販売する時代はほぼ終わった。自動車業界は、EVに興味を持つ新たな購買層を開拓するために、さらなる努力をしなくてはならない。彼らこそが継続的な成長の鍵となるのだ。

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このような購買層はEVにかなり興味を持っているが、EVを充電することでライフスタイルが一変することにまだ納得していない。相当な値引きをしても彼らはなかなかEVになびくことはない。むしろその取引を見送って定価より少し高いハイブリッド車を購入する可能性が高い。

アメリカの自動車情報サイトであるEdmundsからInsiderに提供されたデータによると、EVの平均的な定価は6万1699ドル(約923万円)だが、2024ドル(約30万円)値引きされ5万9674ドル(約893万円)で販売されている。通常のハイブリッドは平均4万437ドル(約605万円)とそれよりも安いが、定価より少し高く販売されている。一方、プラグインハイブリッド(PHEV)は約5万6786ドル(約850万円)で販売されている。

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車のタイプ別の平均的な取引価格の推移。

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Chart: Andy Kiersz/Insider Source: Edmunds

「自動車メーカーがハイブリッドをほぼ無視していることは、(購入者にとって)大きな問題だ」と、コンシューマー・レポートのシニア・アナリスト、クリス・ハート(Chris Harto)がInsiderに語っている。

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「ハイブリッドは市場に大量に出回っているわけではないため、本当に買いたい人でも手に入れるのが難しい」

変化するEV市場

2023年後半は、EVの近い将来にとって良い兆候が見当たらない。EVは販売するためにあらゆる種類の値引きやインセンティブが必要で、ガソリン車よりも売れ行きが遅く大量の在庫になっていると、カーディーラーは何カ月も前から警鐘を鳴らしてきた

多額の資金を投入して電動化を進めてきた自動車メーカーも、ようやくこのEVの窮地に気づき始めた。ここ数週間、複数の自動車メーカー幹部が、EV需要の鈍化と、それが当面の収益に与える影響について懸念を表明している。

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一方、ハイブリッドやPHEVは、完全なEVにこだわることなく、クリーンな車に乗ることで得られるメリットを享受するための妥協点として、購入者の支持を集めている。

しかし、ハイブリッドの需要増と供給不足は価格上昇につながり、環境にやさしい選択をすることの経済的メリットを損なう可能性がある。

コンシューマー・レポートが行ったハイブリッド車の価格と維持費に関する最新調査によると、ハイブリッド車を初めて所有する場合、燃料費とメンテナンス費などが安くで済み、正味2000ドル(約30万円)の節約になるという。また長期で見ると、平均的なハイブリッド車を寿命がくるまで使用した場合、ガソリン車を使用したときと比べて4000ドル(約60万円)以上の節約になるという。しかし、購入時の価格が上昇すると、その節約効果はすぐに消えてしまうとハートは指摘する。

「それでも環境面でのメリットを得ることができ、ガソリンスタンドに行くことも少ないので節約もできる。だが購入価格が大幅に値上げされていれば、総額で見ると節約にならないかもしれない」

ハイブリッド革命

ハイブリッド車へのニーズは今に始まったことではない。世界最大の自動車メーカーであるトヨタの豊田章男会長は、完全電動のパワートレインを普及させる前に、ハイブリッドが必要だと以前から語っていた。

ディーラーもその流れに乗っている。バージニア州を拠点とするカーディーラー、Magic City Auto Groupのキャメロン・ジョンソン(Cameron Johnson)CEOは、こう指摘する。

「ピックアップトラックを運転するすべての顧客に、EVへの切り替えを促そうとしても、とにかく需要がない。率直に言うと、もっとハイブリッドの選択肢を増やす必要がある。それこそがガソリン車から顧客を引き離す最も簡単な方法だ」

そして、他の経営陣もそれに気づきつつある。フォード(Ford)は10月26日、EVへの120億ドル(約1兆8000億円)の新規投資を延期し、今後のEV需要を見極めると発表した。一方、F-150ライトニングのハイブリッドモデルについては需要が高まっていることから、生産台数を倍増させる計画だ。つまり、フォードはライトニングの完全EVモデルにかなり力を入れていたが、そのようなブランドでも、ハイブリッドの顧客に対応する余地があるということが明確に示された。

経営コンサルティング会社Beryllsのマネージング・ディレクター、マーティン・フレンチ(Martin French)はこう述べている。

「(関係者は)ハイブリッドのメリットや、将来的によりクリーンな環境にするためのギャップをいかにして埋めるのかについてはちゃんとした議論を避けていたようだ。それに関してホンダとトヨタ以外、みんな何を考えていたのだろうか?」

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