現行の10円玉が「27万円」に大化け! でもエラーコインでもない? その10円玉の正体とは

現行の10円玉が27万円になった。

この事実は、にわかには信じがたい。普段使っている10円玉とは違うのでは? エラー貨幣か何かでしょう? そう思う人が大半でしょう。2023年10月に開催された第115回入札誌「銀座」において、その27万円の10円玉が出現しました。

オークションで出品されたのは、昭和30年の10円玉です。いわゆる「ギザ十」と呼ばれる、縁に溝があり、ギザギザしている10円玉です。

ギザ十は、昭和26年から昭和33年に発行されたものが該当します。発行時期が短めとはいえ、お釣りなどでもらえることもしばしば。しかも、昭和30年のギザ十は1億2310万枚も発行されており、決して珍しいものではありません。一体なぜ27万円という高額な落札が生じたのでしょうか?

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ほぼ元の色を保っていることがポイント

実際にオークションに出品された昭和30年の10円玉を見ると、昭和30年発行とはいえ、明らかに新品同様の美しさを保っていることが分かります。コインの評価機関PCGS社のスラブケースに入っており、「MS66RD」の評価を受けています。

実は今回の10円玉のポイントは、「MS66」という完全未使用評価と、「RD」という元の銅の赤色を95%以上保っているという、2つの高評価。これが高値が付いた要因といえるのです。

コインの評価は、70が完璧、以下69、68とランクが続きます。一般的に65以上の評価のものが完全未使用品といわれており、今回の10円玉も66評価のため完全未使用品といえます。

昭和30年というと、1955年です。70年近く経過している10円玉が完全未使用品として流通せずに残っていたわけですから、いかに発行枚数が多いといえどもレアな10円玉といえます。

また、銅貨の場合は元色を保っているかどうか、この評価が価格を大きく左右する側面があります。今回のケースでは、ほぼ元色を保っている美しい10円玉です。古いコインほどRD評価は付きにくいのです。

RDのほか、RB(元の赤色を5~95%保っている)、BN(元の赤色が5%以下である)という評価があります。PCGSによれば、昭和30年の10円玉のうちRD評価のMS66は最高鑑定となっており、たった2枚しかありません。この状況がマニアが高値でも買いたくなる状況を作りだしていると考えられます。

50枚ロールになっている10円玉であれば可能性あり

こんな完全未使用品は手に入るわけがない、と思うでしょう。たしかに、普通に出回っている10円玉ではまず難しいです。とはいえ、50枚のロールになっている10円玉があれば可能性があります。いわゆる完封出しと呼ばれるもので、ロールから取り出し鑑定に出すのです。

この年代になるとロール自体がなかなかないと思われますが、昔から商売をやっていて金庫に古いお金がある、祖父母がコイン収集を行っていたという人であればもしかすると見つかるかもしれません。その際は慎重に扱ってください。とんでもないお宝となる可能性がありますよ。

<参考>第115回入札誌「銀座」Lot番号:377 10円青銅貨 昭和30年 PCGS(MS66RD)(銀座コインオークション)▼伊藤 亮太プロフィール慶應義塾大学大学院商学研究科修了。一般社団法人資産運用総合研究所代表理事。ファイナンシャルプランナーとして、家計・保険等の相談、執筆、講演、大学講師を主軸に活動。大学院時代の専門は社会保障で、経済・金融に関する解説も得意。コイン収集マニアの一面も。
(文:伊藤 亮太(株式・ファイナンシャルプランナーガイド))

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