岸田首相が心酔する巨大金融企業集団「ブラックロック」。世界の金融・財政に大きな影響力を持つ集団だが、彼らは目下、日本にある「1100兆円の現預金」に注目しているという。それを拠出しているのは、当然ながらわれわれ日本国民だ。大切なおカネを使って、岸田首相は支持率稼ぎの博打に出ようとしているーー。『週刊現代』が報じた『岸田首相が「国民の資産1100兆円」を「海外流出」させようとしている…その「黒幕」の正体)』について、さらに追及する。 【写真】日本を標的にする金融集団「ブラックロック」とは何者か
日本を狙う金融界のレジェンド
ブラックロックが、いま「さらなる開拓先」として目をつけているのが、日本だ。経産省の官僚が明かす。 「ここ数年、ブラックロックは中国市場の開拓に心血を注いできた。ところが米中関係の悪化に伴い、中国大陸での活動にはいろんな制約が出てきました。そこで、目をつけたのが日本市場。香港に代わるアジアの新たな金融センターの候補として、日本での活動に本腰を入れ始めたのです」 同社のCEOであるラリー・フィンク氏は、切れ者中の切れ者。投資先の企業のトップに毎年送られる手紙は「フィンクレター」と呼ばれ、これを読めば今後数年間の金融トレンドが理解できるといわれるほど。いわば、金融界の生きるレジェンドだ。 そのフィンク氏が、自ら「日本市場開拓」の陣頭に立って指揮を執っている。今年6月と10月の二度にわたり来日し、岸田首相と直接、日本の金融政策について意見交換したのだ。 「6月6日に来日した際、フィンク氏は首相と、アメリカの投資会社が日本企業のポテンシャルに注目していること、そして海外から日本への投資を呼び込むためには、日本の閉鎖的な金融制度・空間を改革開放しなければならないことなどを熱心に語り合ったのです」(首相側近)
外資の言いなりになる首相
金融界のトップオブトップから直接の指南を得た岸田首相は、「世界が日本に注目している!」と舞い上がらんばかりに喜んだという。そして「日本を新しいアジアの金融センターにして、海外からのマネーを呼び込む。それを景気浮揚につなげるぞ」と決意を固め、日本の金融市場改革を進める施策を次々と進めていったのだ。 「首相が『経済の岸田』を自負するようになったのはこの頃から。フィンク氏と経済政策について意見交換をしたことで、妙な自信をつけたのでしょう。 いま、首相の顔は完全に彼ら外資系金融エリートのほうを向いている。フィンク氏との対話を参考に、首相は『日本に英語のみで行政対応が可能な行政特区を作る』『海外のエリート金融マンが日本で暮らしやすいように、教育や住環境の整備を進める』など、関係各省庁に矢継ぎ早に指示を出していきました」(同前) 岸田首相の頭の中にある考えは、極めてシンプルだ。「日経平均が上がれば、岸田内閣の支持率も上がる」。ただ、これだけだ。 株価を上げる最も手っ取り早い方法は、海外の機関投資家や金融機関に日本企業の株を買ってもらうことだ。9月のニューヨークでの講演でも、とにかく「日本を金融先進国にする」と強く訴えた。物価対策や年金改革、そして減税よりも、いま首相の頭の中にあるのは「海外投資家の目とおカネを日本に向けさせるための環境整備を進めること」なのだ。 海外から日本市場への投資が活発になれば、日本の株価も多少は上がるだろう。支持率も多少は上向くかもしれない。これは、岸田首相の最後の賭けである。
「迷走メガネ」の末路
支持率は過去最低。こうなりゃ博打に走るしかないとやけくそになってるのかも Photo by gettyimages
しかし、その賭けには、大きな代償が伴う。日本の大手証券会社の幹部が明かす。 「日本への投資を約束する代わりに、ブラックロックをはじめとする外資系金融企業は、日本の金融市場の門戸開放や制度改革を徐々に迫っていくでしょう。彼らに頼らざるを得ない岸田政権に断ることはできず、固く閉ざされていた重い扉を開けるしかない」 生き馬の目を抜く金融の世界に棲む彼らの狙いは「1100兆円」といわれる日本人の莫大な現預金だ。 彼らは岸田首相に「日本の市場をもっと開放していけば、日本経済はもっとよくなりますよ」とささやきながら、日本に眠る巨額の個人資産を、金融市場に引っ張り出そうとしている。 前出の磯山氏が解説する。 「彼ら海外の投資機関は、日本企業に一定の投資をしながらも、金融規制が緩くなったところで、日本に眠る現預金をかき集め、アメリカや欧州の株価が値崩れしたところで欧米の株式を買うはずです。 つまり『われわれにおカネを預けてください』と呼びかけて日本から吸い上げたおカネで、海外の株や債券を買う。その結果、上がるのは海外企業の株価です。 しかも集めた日本円を売って海外に投資するので、そのぶん円安が進みます。 とはいえ、彼らがやろうとしているのは、自分たちの賭けを最大化しようという投資会社としては当たり前のこと。ただ、岸田首相自身は『日本に投資をしてくれ』と言いながら、結局は日本マネーを海外に逃がしてしまうような危険な橋を渡っていることに気づいていないのではないか」 岸田首相は、もはや自分のやっていることが本当に日本のためになるのかどうかさえ判断できないほど追い込まれているのだ。増税メガネと呼ばれることを過度に嫌がっている首相だが、ならば「迷走メガネ」と呼ぶのが適当だろう。 「週刊現代」2023年11月11・18日合併号より