「横浜刑務所で作ったパスタ」が大人気すぎて受刑者が残業する事態になっていた

季節外れの暑さを記録した11月の3連休。全国各地で様々なイベントが開催されたが、連休中日の11月4日に横浜刑務所・横浜少年鑑別所で開催された「第51回横浜矯正展」が注目を集めていた。ここでは受刑者が作った刑務所作業製品が販売されているのだが、購入のためのひときわ長い行列ができていたのが、「横浜刑務所で作ったパスタ」と銘打たれたフェットチーネ麺だ。

 デュラムセモリナ小麦と食塩のみを原材料とし、開発に10か月を要したという乾麺は、メディアでも取り上げられたことから知名度が上がり、「もちもちの食感がたまらない」「生パスタみたい」などといまや大人気商品となっている。

 刑務所作業製品は、各刑務所内にある販売ショップや、「文化祭」「矯正展」などで購入可能だが、このパスタは今年4月の発売からすでに1万食が売れており、この日も1袋330円で「1人3袋まで」という形で売られた3500袋が完売となった。メルカリでも早速、約3倍の値段で転売されている。横浜矯正展参加者はこう言う。

SafeFrame Container
SafeFrame Container

「最初は洗濯石鹸『ブルースティック』とパスタの列が同じだったので2時間待ちだったのですが、途中から列が分けられました。それでもパスタの列がすごく長くなっていて、結局購入までに1時間半くらい並びました。

 幟旗も立てられていたり、横浜刑務所全体でパスタを盛り上げようという機運が感じられましたよ」

 そんな「横浜刑務所で作ったパスタ」の人気の影で、横浜刑務所の製麺工場にも異変が起きていた。「人気すぎて製麺工場で刑務作業をしている人たちが残業させられているんですよ」と語るのは、同刑務所の出所者・X氏だ。

9月から増産体制

 通常、刑務所における受刑者のタイムスケジュールは決まっている。6時45分に起床し、点検や朝食を済ませたのち、居室から各工場へ移動して8時から刑務作業を行なう。昼食や休憩、運動時間を挟みながら、16時40分には作業終了。居室に移動し、17時に点検を行なうと、その後は夕食や余暇時間となる。X氏はこう言う。

「ほかの工場だと入浴は週に数日なんですけど、製麺工場に勤める受刑者たちは食品を扱うので、毎日入浴があるんですよ。それで入浴を終えて居室に戻ってくるのが20時くらいでしたから、19時くらいまで作業していたと思います。残業が始まったのは9月の終わりぐらいからでしたね」(同前)

 11月4日開催の「横浜矯正展」での売れ行きを見越してか、同刑務所では9月から製麺工場の受刑者たちによる増産が進められてきたのだという。つまり、「横浜刑務所で作ったパスタ」は製麺工場の受刑者らの残業の結晶だったということだ。

 法務省矯正局に取材すると、こう答えた。

「刑務所作業製品は矯正協会の刑務作業協力事業部から依頼を受けて製作、納品しています。これを矯正協会が販売する形となっています。

 令和4年には約30億円ほどの収益があったと聞いており、大半は原材料の購入費に充てられるほか、国庫納入金や事業運営金も差し引くと、約10パーセントが売り上げとなります。うち一部は犯罪被害者支援団体助成金として寄付しているとのことです」

 このフェットチーネ麺で、レモンクリームパスタを作ってみた。なんと茹でるときには鍋に塩を入れなくてもよいのだという。忙しいビジネスパーソンにはもってこいだ。茹で上がりは、太い麺によくソースが絡み、食感もモチモチ。ぜひもっと気軽に購入できるようになれば……と思うが、そうなると、受刑者の残業がまた増えてしまうだろうか。

◆取材・文/高橋ユキ(フリーライター)

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