仙台、名取、富谷、利府の宮城県内3市1町が住宅地を整備するため計12地区の田畑など約400ヘクタールを市街化区域に編入する案について、宮城県が全て了承したことが11日、分かった。想定人口は約1万3500人で、民間主導の土地区画整理事業などを進める。県全体では人口が減る中、好調な宅地需要を背景に人口増を狙う仙台市と隣接自治体の動きに、県も呼応した格好だ。
[仙塩広域都市計画]宮城県が定める広域の都市計画。仙台、塩釜、名取、多賀城、岩沼、富谷、松島、七ケ浜、利府、大和、大衡の6市4町1村にまたがる。県は6~8年ごとに土地利用の目標などを示すマスタープラン(基本計画)を改定しており、宅地や商業、工業地を開発できる「市街化区域」と、市街化を抑制する「市街化調整区域」の区域区分を見直す。
県は11市町村にまたがる仙塩広域都市計画のマスタープラン(基本計画)を改定中。改定は2018年以来で、各自治体の変更案を踏まえて宅地や店舗を開発できる市街化区域などを見直している。県は見直し案をまとめ、10月に各地で説明した。
市街化区域への編入を予定する宅地向けを含む地区は表の通り。25年5月以降、区画整理事業などが進めば市街化区域に随時移す「特定保留」として、仙台市は泉中央西、荒井駅北、上愛子樋田、愛子東の4地区(計約69ヘクタール)、名取市は名取中央スマートインター周辺(約54ヘクタール)を設定した。
また、見直し案に明示していないものの、事業の熟度が高まれば市街化区域に編入する「一般保留」として、仙台市1地区、名取市3地区、富谷市1地区、利府町2地区の計約275ヘクタールを定めた。
4市町によると、宅地の想定人口は名取が4地区で5774人と最も多く、利府が2地区で4000人、仙台が5地区で2565人、富谷が1地区で1170人と続く。
県は改定に向け、県の総合計画(21~30年度)を踏まえて仙塩広域都市計画区域の人口を推計。このうち市街化区域人口は20年国勢調査の141万9000人から30年に142万2000人に増えるとした上で、「現在の市街化区域では住宅用地が1万4000人分足りない」と推計した。
背景にあるのが仙台圏への人口集中。物件の価格高騰や不足を受け、都市部の旺盛な住宅需要が仙台隣接部に拡大している。県都市計画課は「生活、交通利便性の高いエリアへの人口誘導が原則。宅地が足りず、新たな市街化区域を設ける必要がある」と話す。
住宅地を含まない工業地や商業・業務地についても、仙台、岩沼、富谷、利府、大和の各市町で計14地区、計約553ヘクタールの編入予定が新たに盛り込まれた。
仙塩広域のマスタープランは、国との調整や縦覧、県都市計画審議会を経て24年5月に改定される予定。
「人口を取りこぼさない」「満額回答」仙台近隣の3市町は対応評価
宮城県の仙塩広域都市計画マスタープランの見直し案で、仙台市と隣接自治体が県に申し入れた市街化区域への編入案は要望通り認められた。旺盛な住宅需要を背景に、宅地開発を目指す仙台近隣の市町は「仙台からあふれる人口を取りこぼさない」(自治体関係者)構えだ。
「住居系の市街化区域への編入は厳しくなっていた印象があったが、満額回答だった」。富谷市の若生裕俊市長は編入案が認められたことを評価する。
人口要件5万人の市制移行を目標に掲げる利府町の熊谷大町長も「目標をかなえるには人口増が必要。工業団地と住宅地を同時整備して職住近接のまちづくりを進める」と話す。
仙台市には東北6県から大都市圏への人口流出を受け止める「ダム機能」が期待されている。名取市の山田司郎市長は「仙台単体ではなく、広域圏域でダム機能を果たすことが外側にも人口が広がることにつながる」と強調する。
ただ、県がまとめた9月末時点の人口は3年前と比べ、名取市が0・2%増、富谷市は0・4%減、利府町は0・3%減といずれも微増か微減。経済情勢の変化で土地開発事業が進まない恐れもあり得る。
県も今回の改定案で、仙塩広域11市町村の都市計画区域(市街化区域と市街化調整区域)の人口は、20年国勢調査の148万7000人から10年後の30年に147万人に減ると見込む。市街化区域人口も「30年がピーク」とみており、今後の改定では厳しい対応になる可能性がある。