「ジャニーズ会見の方がマシ」劇団員死去で宝塚〝上層部〟に猛批判 追及に反撃も

今年9月に宝塚歌劇団の俳優の女性(25)が急死した問題で、同歌劇団が14日、記者会見を開いたが、批判が殺到する事態になっている。いじめやパワハラはなく、あくまで過密日程による心理的負荷が原因との言い逃れに終始し、真相解明や再発防止の抜本対策に全く踏み込まなかったからだ。

 タカラジェンヌが自ら命を絶った問題で、調査では女性が所属していた宙(そら)組の俳優62人や役職員、親会社の阪急電鉄役職員らをヒアリングしたという。俳優4人がヒアリングを拒否したが、その理由は明らかにされないままで、上級生がヘアアイロンを押し付けた問題は認定せず、「ウソつき野郎」「やる気がない」などの発言についても「伝聞」と一蹴。いじめやパワハラはないと報告した。

 歌劇団の木場健之理事長は「過密なスケジュールで追い込まれていた中で時間的に重複して起きたことで心理的負荷になったと十分に考えられる」と説明。宙組や上級生に問題はなく、責任は歌劇団にあるとして、自身は12月1日付で引責辞任を表明した。

 歌劇団における厳しい上下関係は一般的にも知られ、多くのOGも証言してきた。それでも役員らは「宝塚歌劇は109年にわたって、ずっと出演者が上級生が下級生に伝承してきた歴史がある。生徒同士の指導、伝承については生徒のみのノウハウの継承の面もある。我々、事務サイドは詳細を把握していなかった」と歌劇団の暗部には触れたくないのが明らかだった。

 怒り心頭なのは遺族側だ。代理人弁護士(川人博氏、井上耕史氏)も都内で会見を行い、時間外労働や過密日程などの「過重労働」が被災者の死につながったことを劇団側が認め、謝罪したことについては評価しながらも、パワハラの存否に関する報告や改善策がなかったことについては「失当」「適切とは言えない」と断罪した。

 そのうえで、調査した外部チームに関し、歌劇団は阪急阪神HD及び阪急電鉄と契約関係のない弁護士事務所と強調したものの、遺族側代理人は「会社からの依頼を受けた調査委員会の域を出ない。『外部の』と言っている意味は阪急の顧問弁護士の調査ではないということに過ぎない」と指摘。別の第三者委員会による再検証を訴えた。

 ネット上でも「ジャニーズの会見の方がまだマシ」「すべて亡くなった女優一人の特殊事例で片付け、宝塚歌劇団のブランドを守ることしか考えていない」「今年見た一番最低の会見」と批判が殺到している。

 歌劇団の会見では、ヘアアイロンの問題で村上浩爾専務理事が「証拠となるものをお見せいただきたい」と反撃した際に怒りと呆れの声がピークに達したが、会見後にこの村上氏の次期理事長への就任が発表された。

 危機管理関係者は「ジャニーズの性加害問題や日大アメフト部の薬物事件などで企業や組織の不祥事に世の中の関心は高く、厳しい目が向けられていることを分かっていないのか。御用委員会によるお手盛り調査かつ、隠蔽隠し会見で、理事長辞任で幕引きを図ろうとしていることにガク然とする」と指摘する。

 遺族側代理人によると、被害者の両親のたった一つの願いは「ただ事実を認めて、謝ってほしい」ということに尽きるという。

「遺族も『宝塚が潰れてくれ』とは思ってない。上級生だってスケジュールが忙しいし、〝タテ関係〟を利用してストレス発散するといった傾向はあったと思う。そういうことも含めて話し合って解決できたら」と事件を糧に歌劇団の抜本改善へ取り組んでもらいたいと訴えた。

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