宝塚の調査報告、遺族は再調査求める「上級生をかばう意識が先行」…理事長「守る伝統ある」

宝塚歌劇団のそら組に所属する女性(25)が死亡した問題で、歌劇団側が14日、公表した調査報告書は過重業務を認める一方、上級生によるパワーハラスメントやいじめを否定する内容だった。遺族側は「ハラスメントに関する内容は間違いだ。納得できない」と強く反発し、再調査を求めた。

 兵庫県宝塚市内のホテルで行われた歌劇団側の記者会見。歌劇団内の上級生と下級生の関係性に関する質問が相次ぎ、対応した木場こば健之けんし理事長らは「伝統の中で守っていかなければならないものもある」「全てがおかしい、全てが変えないといけないとは思ってない」などの説明に終始した。

 公演をスムーズに運営するため、上級生の下級生に対する強い叱責しっせきを見逃していたのではと問われると、「生徒だけのノウハウの継承という面がある。出演者でないとわからない部分があるので、われわれ事務サイドとしては、詳細な内容までは承知していなかった」と釈明した。

 会見では、宙組の4人が調査チームの聴取を辞退したことも明らかにされた。木場理事長は全員の話を聞けていないと認めた上で、理由については「ご容赦ください」と述べた。遺族とはまだ面談できていないとした。

 「ハラスメントをここまで否定するのか。遺族はとても悔しく思っている。残念であり、やるせない」。遺族側が東京都内で開いた記者会見で、遺族の代理人を務める川人博弁護士は、報告書に対する遺族の心情を代弁した。

 9月末に死亡した女性は生前、上級生から様々なハラスメントを受けていたと家族に相談していた。2021年には上級生からヘアアイロンを額に当てられやけどを負ったほか、今年8月以降の稽古中、別の上級生から「下級生の失敗は全てあんたのせいや」「うそつき野郎」などの暴言も受けた、としていた。

 報告書では、ヘアアイロンでやけどをした事実は認定したが、上級生が故意に当てたのかどうかは「判断困難」とした。川人弁護士は女性が遺族に「上級生が意図的にやけどをさせた」と伝えた内容を無視していると指摘した。

 「うそつき野郎」との暴言について事実と認定しなかったが、女性がうそをついていないか繰り返し聞かれたことは認めた。川人弁護士はそうした行為について「人格を否定するもので、パワハラに該当する」と反論した。

 遺族側は報告書の印象として、「上級生をかばうような意識が先行している」とも分析。女性の死亡前1か月間の「時間外労働」が少なくとも118時間だったと認定した点などは「死亡が業務に起因することを示唆している」と一定の評価をしたが、「ハラスメントはなく、長時間労働だけ悪かったで終われば、同じことが繰り返される」と述べ、再調査の必要性を訴えた。

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