宮城・大衡半導体新工場、24年内の着工目指す 準備会社JSMC 呉元雄社長に聞く

宮城県大衡村への半導体工場新設について、準備会社JSMCの呉元雄社長が河北新報社のインタビューに応じ、2024年内の新拠点着工を目指す方針を示した。人材の育成や、半導体研究で実績を誇る東北大と連携した研究開発にも意欲を見せた。
(報道部・三浦光晴、樋渡慎弥)

東北大との連携にも意欲

 -全国31の候補地から宮城を選んだ。決め手は。

 「1番は土地の条件。台湾の最新工場の設計を活用する計画だが、形状や(約17万平方メートルの)広さがぴったりだった。2番目は人材。東北大があり、優秀な人材がいる。そして知事の情熱だ」

 -生産開始は27年を予定する。工事の見通しは。

 「建設関係は人手不足と聞くが、できれば来年後半には着工したい。台湾の図面を活用し、設計に要する時間を圧縮する」

 -工場の生産規模は。

 「毎月最大4万枚のウエハーを生産し、年間1500億~2000億円ほどの売り上げを見込む。立ち上げ時の月1万枚から段階的に増産する」

 -主に車載向け半導体を手がける。事業の展望は。

 「日本での半導体の安定供給を目標にしている。例えば電気自動車(EV)が世界的に普及する中、車載関係の半導体を国内生産できれば、不足に悩まされることはなくなるだろう」

 -10月31日の記者会見で(半導体チップの組み立て・検査など)後工程工場の誘致にも言及した。見通しは。

 「私たちはファウンドリー(受託生産工場)で自社ブランドはない。多くの場合、後工程に関しては顧客が決めるが、近くに進出してくれたらうれしい。協力できる会社を探していく」

 -稼働時の人員を450~500人としている。約半数は台湾から即戦力を派遣する計画だが、日本での人材確保・育成の方策は。

 「台湾のエンジニアによる教育や、台湾の工場で半年から1年経験を積んでもらう方法を考えている。さらに大学と連携し、東北大や各地の大学から優秀な人材を募りたい。私たちは準先端領域の半導体が強みだが、次世代技術を共同開発できればうれしい。東北大は半導体分野に加え、材料関係も強い。研究成果の実用化にどんな協力ができるか考えていきたい」

協定書を手に笑顔を見せる(左から)村井知事、呉社長、小川村長=14日、宮城県庁

宮城県、JSMC、大衡村が立地協定 生活環境の充実を支援

 台湾の半導体受託生産大手、力晶積成電子製造(PSMC)とSBIホールディングスによる宮城県大衡村への半導体工場新設に向け、両社が出資する準備会社JSMCと県、村は14日、新工場の立地に関する協定を結んだ。県と村はPSMC側の工場整備や移り住む台湾の技術者らの生活環境の充実を全面支援する。

 工場の事業規模は総額約8000億円を見込む。2027年の生産開始を予定し、29年にフル稼働させ、月4万枚の半導体ウエハー(基板)を生産する計画。

 協定では、第二仙台北部中核工業団地内の中央平(約17万平方メートル)に工場を建設することを確認。県は人材確保や各種の許認可手続きを支援するとともに、操業開始に向け、電気やガス、水道などのインフラ事業者とJSMCの仲介も担う。県と村が共同で住環境整備に取り組むことなども盛り込んだ。

 県庁であった締結式には、JSMCの呉元雄社長(PSMCジャパン社長)、村井嘉浩知事、小川ひろみ村長の3人が出席した。

 呉社長は「村井知事と小川村長の力を借りながら成功に向けて取り組む」と述べた。

 村井知事は「半導体製造の国内の重要拠点として東北の発展に貢献いただけると確信している」と強調。就任当時から掲げる「県内総生産額10兆円」にも触れ、「今後、継続的な10兆円の維持が可能になると思う」と期待感を示した。

 小川村長は「国や県、周辺自治体とも連携しながら、村を挙げて全力で支援する」と述べた。

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