福島・国見救急車リース中止問題 DMMが事業原資に関与 匿名で企業版ふるさと納税

備蓄食品製造のワンテーブル(多賀城市)が受託した高規格救急車12台を所有しリースする福島県国見町の事業が中止となった問題で、車体製造を受注した企業の親会社のIT大手DMM.com(東京)とそのグループ2社が、計4億3200万円の事業原資を企業版ふるさと納税で匿名寄付し、うち6000万円を支出した1社が寄付の直後、DMMに吸収合併されていたことが分かった。

グループで利益囲い込みか

 企業版ふるさと納税は寄付額の最大9割が法人事業税などから控除される。DMMは当初からワンテーブルを介した子会社の事業受注を前提に、税額控除と合わせた利益の囲い込みを図ったとみられる。

 町は昨年11月の公募型プロポーザルでワンテーブルへの事業委託を決めた。応募したのはワンテーブルのみで、救急車ベンチャー「ベルリング」(東京)が提携して車体製造を担った。

 中止前の事業の流れは図の通り。町は企業名を明らかにしていないが、複数の関係者によると、ベルリングの親会社DMMが昨年2月に3億5700万円、DMMのグループ2社が同7、8月に計7500万円を町に寄付した。

 7月に1500万円を寄付した企業Aは、DMMグループの成人向け商品の流通などを手がける。8月に6000万円を寄付した再生可能エネルギー関連の企業Bは寄付の6日後にDMMに吸収合併され、権利関係はDMMが継承した。

 河北新報はワンテーブル前社長が救急車事業を関係者に説明する様子を記録した音声データを入手した。これによると、前社長は「DMMグループが毎年うちに5億円を寄付する」「一緒に救急車の開発をやっている」などと述べている。https://www.youtube.com/embed/yCj5f8s5Iu8島田昌幸前社長、救急車事業についての発言

 前社長はDMMが事業の原資を企業版ふるさと納税で寄付する手法を「超絶いいマネーロンダリング(資金洗浄)」とも語っており、制度趣旨を逸脱した「課税逃れ」の可能性がある。

 企業版ふるさと納税は癒着を防ぐため、自治体から寄付企業への経済的な見返りを禁じる。寄付企業の子会社による事業受注は条件次第で許容されるが、公正公平な入札契約のプロセスを経る必要がある。

 国見町のケースでは、町が事業者選定で使った仕様書の作成にワンテーブルが関与し、ベルリング製車両に酷似する指定を盛り込み、他社を不当な形で排除したことが判明している。一連の対応は官製談合防止法などに触れる可能性がある。

 河北新報は9日、DMMに見解を尋ねたが、14日までに回答はなかった。国見町議会は地方自治法100条に基づく調査特別委員会(百条委)で今後、町や企業の関係者への証人喚問、参考人招致を実施する。

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