山形市の宅建士梅津くれ緒さん(42)が、山形県内で増加する古い空き家を都会の若者に仲介する事業に取り組む。新築にはない魅力を交流サイト(SNS)で発信し、契約数を伸ばしている。自身も山形に移住した梅津さんは「大好きになった山形に移住やUターンする流れを進めたい」と意気込む。(山形総局・原口靖志)
「状態良好な物件多く、伝統工法は古美術のよう」
梅津さんは青森市出身。2003年に結婚を機に山形市へ移住し、山形県内の住宅会社や不動産会社の勤務を経て21年に独立。「RoomruBe(ルームルベ)」を設立した。
事業は、空き家など1970年ごろ以前の築古(ちくふる)物件の情報を仲介サイトや自社のSNSで発信し、移住や起業の希望者に貸し出す仕組み。建築年数がたって資産価値が減った分、賃貸料は割安で済み、借り主が自由にリフォーム可能なのが特徴だ。
会社設立から約3年で47件の契約が成立し、うち3割近い13件が県外からの移住者。物件を活用した起業は6件実現し、店舗での開業に関する問い合わせも25件あった。
梅津さんは「県外からの問い合わせが多い。オンラインで仕事を続けながら、物価の安い山形への移住を目指す傾向が高まっている」と説明する。会社の事務所も元は空き家で、山形市印役町の築60年の木造住宅を取得し、ほぼ1人で約5カ月かけてリノベーションした。
「山形は3世代同居率が日本一高いこともあり、築古でも長く使われて状態が良好な物件が多い。丸太から製材した木材や伝統的な工法などが用いられ、古美術のようなヴィンテージの良さもある」と梅津さんはアピールし、「食べ物のおいしさや人柄も含め、山形の良さを『推し活』したい」と笑う。
山形県や県企業振興公社などが取り組む人口減などの課題解決に向けたソーシャルイノベーション創出モデル事業とも連携。物件の掘り起こしや移住者の就職などのキャリアサポートといった支援を見込む。梅津さんは「若い世代が『マイホームは築古がいい』と選んでもらえるようにしたい」と広がりを願う。
国の住宅土地統計調査によると、山形県内の空き家は2018年時点で約5万4200戸。県は「築年数では集計していない」としている。