「蔵王かぼちゃ」存続に力 山形市特産、生産者2人だけに

山形市が地域特産のカボチャ「蔵王かぼちゃ」の保存活動に力を入れている。ホクホクした食感と優しい甘みで地元の食文化に根付いてきたが、高齢化などで生産者が減り、現在は2人だけ。伝統野菜の消滅の危機を受け、市は試食イベントを開くなど関心を高めてもらい消費拡大を促す。

市がブランド化 魅力発信、消費促す

 蔵王かぼちゃは、青磁色で大きなへそがある外観が特徴。「マサカリかぼちゃ」の異名の通り、まさかりや、なたを使わないと切れないほど皮が硬く、長期保存しても風味が落ちない。

 1948年に栽培が始まったとされ、昼夜の気温差が大きな中山間地の蔵王堀田地区を中心に産地が形成された。近年は農業者の高齢化に加え、交雑を避ける品種保持の難しさやイノシシなどの食害もあり、以前は20人ほどいた生産者が減少。生産量も500キロ程度にとどまる。

 市農政課の担当者は「地域に伝わる野菜。何とかして生産量を維持させたい」と強調。同様に地域特産の「赤根ほうれんそう」「悪戸いも」とともに「伝統野菜」の名称でブランド化してPRに取り組む。

 市の観光商業施設「紅の蔵」で10日に試食イベントを開き、ふかした100人分を来場者に振る舞った。市内の会社員堀内拓音(たくと)さん(39)は「初めて存在を知ったが、すごくおいしい。子どもに食べさせたい」と話した。併設するレストランが調理したプリンの販売でも購入者の列ができた。

 企画した紅の蔵のコーディネーター堀野秀子さんは「『マサカリかぼちゃ』の名称で愛されたカボチャを守るため、味や形などの魅力を若い人たちに発信していきたい」と語る。

 蔵王かぼちゃは毎年、収穫期の10月を中心に市内の直売所で販売するが、数に限りがある。今月26日まで市内外の飲食店で開催中の「秋のやまがた野菜・イタリア野菜料理フェア」で、蔵王かぼちゃを使ったメニューを味わえる。

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