「グミ」を食べた人が体調不良で搬送されるケースが相次いでいる。口にしたのは、大麻の有害物質「THC」に似せた成分が入った、いわゆる“大麻グミ”とみられている。
【映像】大麻グミで15時間気絶した女性のインタビュー
11月3日、東武スカイツリーライン押上駅のホームで体調不良を訴えた20代の男女4人が病院に搬送された。4人は警視庁の調べに対し「電車に乗る前に大麻グミを食べた」と話している。
さらにその翌日。東京・小金井市の武蔵野公園で開催された「武蔵野はらっぱ祭り」で、10代から50代の男女5人が嘔吐などの体調不良を訴え、次々と病院に搬送される事態に。5人は会場にいた男性が配っていたグミを食べたという。
押上駅の事案との関連について詳しいことはわかっていないが、配られたグミのパッケージには商品名とともに「HHCH」と書かれており、大阪市の会社が製造したものだった。「HHCH」とは、大麻の有害成分「THC」に似せて作られた合成化合物。そのため、「HHCH」が含まれたグミは“大麻グミ”とも呼ばれている。
「THC」は幻覚症状などを引き起こし、違法な成分として規制の対象となっているが、「HHCH」は、現在の法律では規制されていない。「HHCH」を摂取すると体にどのような影響があるのか?
日本臨床カンナビノイド学会 副理事長 正高佑志医師は「基本的に大麻のTHCに類似するような陶酔作用を引き起こすが、過剰に摂取すると気持ち悪くなっておう吐したり、眠くなって動けなくなる。そして症状として最も恐ろしいのは不安や妄想を引き起こして、ある種のパニックを誘発することだ」と説明した。
また、「大麻グミというかTHCHグミ、1粒で15時間も気絶しちゃうほどすごかった記憶 2度と食べたくない」とロンプラ(@lonely_planet_)さんがXに投稿した「THCH」も今年の8月から「指定薬物」として規制された大麻成分だ。規制される前は「THCH」を含んだグミやクッキーなどの商品が販売されていた。
このグミを食べた時の様子をロンプラさんは「規制される前、飲み会の帰りに友達にもらって食べたところ、最初は大丈夫で電車に乗って家まで帰ったのだが徐々に“グワングワン”とするように。その後のことは何も覚えてない。夢を見ないほど深い眠りにつき、起きたら翌日の夕方だった。何も知識がなかったが、もっと慎重になるべきだった」と振り返った。
普通のお菓子を食べる感覚でパクリ。しかしこれはロンプラさんに限った話ではない。大麻成分を含んだ食品のリスクについて正高医師は「一般的に大麻は喫煙されるものだが、食品として摂取した場合は、喫煙と比べて効果の効き始めが遅く、作用の時間が長く、“効き過ぎる”リスクも高い。知識がない人、心の準備ができてない人が、いきなりそれを摂取することによって、パニックになる。実際にカナダのように大麻の合法な地域においても、救急搬送等になるケースは圧倒的に食品が多い」と説明した。
カナダでは流通を国が管理し、犯罪組織の不法取引を排除する狙いで、嗜好用の大麻を合法化している。大麻成分「THC」は日本では規制されているが、カナダではその成分が入ったお菓子も販売されているのだ。
子どもがもらったハロウィンのお菓子に「THC入りのグミが混ざっていた」と話すのは、バンクーバー在住のホール奈穂子さんだ。
「見た目はいつも食べているグミのお菓子と同じものだったので、(娘が)1つ口の中に放り込んだところ『ちょっと変な味がしたから残りは捨てた』と。そうすると数分以内に頭がクラクラして、起き上がれなくなってしまった。本人曰く『何か遠くから近くからいろんな声が聞こえたようにも感じた。感情の波がおかしくなって、とても怖かった』と」
すぐさま救急病院へ連れて行って事なきを得たが、このようなアクシデントを防ぐためには、自分で自分の身を守る知識を身につけることも大事だと奈穂子さんは話す。
「大麻の入ったお菓子は一般的売られているため、『もらったものは広げてみて、ちゃんと食べていいものかどうか親と一緒に一つずつ見る』というのが自衛策の一つかと。そうすると子どもも自分で考えて『これは大丈夫。これは食べちゃダメかも』という知恵がつく」
日本では大麻は違法だが、正高医師はこうした大麻成分を指定薬物として一つひとつ規制しても、新たな化合物が流通する「イタチごっこ状態」になると指摘する。
「今の規制はあまりうまくいっていない。『全部ダメ』という形ではなく、濃度などに制限をかけた上で何かしらの物を認容するような形でしっかりルールを定め、その中で流通を認めていくべきだ。イタチごっこを延々と続けると、世代を経るごとに“何かよく分からない化合物”になっていくリスクがある」
(『ABEMAヒルズ』より)