東北の地方銀行、第二地銀15行の2023年9月中間決算が出そろった。単体ベースの純損益は、黒字転換したきらやか銀行(山形市)を含めて5行が増益、10行が減益となった。住宅ローンや企業の運転資金需要の高まりを背景に貸出金利息が全体で5%伸びたが、昨年の海外金利の急上昇を受けて外国債券や投資信託の売却を進めた結果、有価証券利息配当金が12行で前年同期の実績を下回った。
各行の主な決算内容は表の通り。15行の純損益の総額は14・1%増えた。前年同期に約46億円の赤字を出したきらやか銀は、経費削減や与信関係費用の大幅減で当初予想を4億円上回る6億円余りの純利益を計上した。預金残高の減少など課題はあるが、川越浩司頭取は「(経営の安定化に向け)まずは一つ進んだ」と手応えを口にした。
有価証券利息配当金は12行で1・0~73・9%減った。秋田銀行は昨年、海外金利の急上昇を受けて早々に外国債券を売却。新谷明弘頭取は「有価証券の残高が減り、資金利益が減少した。有価証券残高を積み上げようにも(市場環境が)難しい局面だ」と減益の理由を語った。
同じく減益だった山形銀行の佐藤英司頭取も「ポートフォリオ(株式や債券の運用資産構成)を入れ替えた影響が大きい」と話した。
新型コロナウイルスの5類移行に伴い個人消費や企業の設備投資、運転資金需要は堅調で、9月末時点の貸出金残高は10行で増えた。1・6%増の東邦銀行は貸出金利息も1・8%伸び、佐藤稔頭取は「経済回復の中で相応の結果を得られた」と述べた。
貸倒引当金繰り入れなど与信関係費用は6行で増えた一方、戻し入れ益が出た仙台銀行など3行を含む9行で減った。15行の総額は前年同期比で4割弱に抑制された。
新型コロナ対策の実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の返済本格化を受けて倒産件数は増えているが、小規模倒産が大半を占める。七十七銀行の小林英文頭取は「大きな影響が出ているわけではないが、原材料高や人件費の高騰を価格に転嫁できない企業は厳しくなってくる。早めに融資先の状況を把握し、支援していきたい」と述べた。
24年3月期の通期業績予想を上方修正したのは七十七銀と岩手銀行の2行。山形銀は下方修正した。青森銀行の成田晋会長は「中間決算の利益は当初の計画を上回っているが、経済の先行きは不透明だ」と話し、業績予想を据え置いた。
各行トップは金利上昇意識 定期預金で引き上げの動きも
日銀の金融政策修正で長期金利が上昇傾向にある中、東北の地銀、第二地銀が9月中間決算を発表した記者会見では、各行のトップから金利上昇を意識した発言が相次いだ。一部地銀は記者会見後、定期預金金利の引き上げを発表した。
国内の長期金利の上昇は、大半の銀行にとって貸出金利息や有価証券利息配当金など資金利益の上昇につながるため、長期的にはプラスに働く。だが、短期的には保有する低金利の10年物国債などの価格が下がり評価損が発生する。
山形銀行の佐藤英司頭取は「ゼロ金利が解除されれば、時間はかかるだろうがトータルとして収益が改善する見通しを立てている」と期待感をにじませた。
日銀は10月、緩やかに下がり続けてきた東北の地域金融機関の貸出金利について「横ばい」と修正した。
福島銀行の加藤容啓社長は「融資金利と預金金利を引き上げる方向に近づいている」と言及。七十七銀行の小林英文頭取は長期貸し出しを念頭に「上半期は貸出金利を上げる交渉はしていないが、下半期は市場動向に応じた適正な金利を適用するよう指示した」と明かした。
大手行を中心に定期預金金利を引き上げる動きが広がる中、東北でも同様の取り組みが本格化してきた。
東北銀行(盛岡市)は14日、期間5年以上の定期預金金利を16年ぶりに引き上げると発表した。期間10年の場合、利回りは変更前の100倍に当たる0・2%となる。佐藤健志頭取は10日の決算会見で「適正な時期に必要な対応を図る」と引き上げを示唆していた。
仙台銀行の鈴木隆頭取も「預金に力を入れるトレンドになっている」と述べ、同行としては15年ぶりの定期預金金利の引き上げに前向きな姿勢を見せた。