警視庁は20日、ユーチューブ番組「ガッツch」を運営する中島蓮こと今野蓮容疑者(30)と、みっちーこと奥村路丈容疑者(28)を覚醒剤取締法違反(教唆)の疑いで逮捕した。同じ私人逮捕系ユーチューバーでは、煉獄コロアキこと杉田一明容疑者(40)が1週間前に名誉毀損の疑いで逮捕されたばかり。相次ぐ摘発で私人逮捕系どころか世直し系、社会系のユーチューバーが駆逐される可能性も出ている。
今野容疑者は今年8月、覚醒剤の売人を捕まえる動画を撮影する目的で、ネット上で覚醒剤の購入意欲を伝えて、持ってくるようにそそのかした覚醒剤取締法違反の教唆の疑いが持たれている。
同容疑者はユーチューブ番組「ガッツch」を今年2月に開設し、「痴漢、盗撮の撲滅運動をしているパトロール系ユーチューバー」を自称。主に電車内での痴漢や駅のエレベーターで盗撮などをしている犯人を現行犯逮捕で取り押さえ、警察に引き渡す動画を投稿していた。
同容疑者を知る関係者の話。「昨年、経営していたメンズエステ店でセラピストに触れるなどの違反行為を働いた客から100万円の罰金を取ったとして、恐喝や風営法違反で逮捕されています。その際も痴漢を働いた客が悪く、メンエス界の健全化のためと主張していました。痴漢や盗撮取り締まりもその延長線上で、なにか過剰なまでに女性に手を出す男を許さない正義感があった」
一方で、チャンネル登録者数は26万人、動画の再生数は軒並み数十万再生を数える人気ぶりで、月の収入は200万円を超えるようになっていたという。「ちょっと密着したぐらいの行為でも痴漢だとして、過激化していった。逮捕案件となった覚醒剤も売人をおびき寄せた時点で逮捕リスクがあるのはわかるものだが、撮れ高(撮影成果)のために安易に手を出したのでは」(同)
私人逮捕系ユーチューバーは誤認逮捕や名誉毀損などにつながる恐れがあり、社会問題化していた。同容疑者も今月に入って、ユーチューブの広告収益が停止される事態となった。すると「活動を続けさせてください。われわれは絶対に痴漢撲滅を諦めません」とクラウドファンディングを呼び掛けていた。しかし、直後に煉獄コロアキに続くスピード逮捕となった。
ユーチューブ事情に詳しい関係者は「コロアキとガッツ中島の逮捕は当局の見せしめでしかない。私人逮捕系には法に触れないように配慮しているユーチューバーもいるが、その境界線は難しく、常習的に配信していくのは難しくなるでしょう。また有名ユーチューバーがよくやる、ぼったくり店潜入やあおり運転トラブル、街中で不良に絡まれるなどはほとんどヤラセですが、世直し系の企画も誤解を招く可能性があり、手を出しづらくなるのでは」と指摘する。
2人は目立ち過ぎたために当局に狙われたとも言えるが、今後ユーチューブを代表とする動画配信かいわいでは、過激行為に走れない自粛の嵐が吹き荒れることになりそうだ。