宮城県の広域防災拠点、総事業費422億円に 2度目の増額、当初計画の4割増 JR補償費が膨らむ

宮城県が仙台市宮城野区のJR仙台貨物ターミナル駅敷地に整備する広域防災拠点を巡り、JR貨物に支払う補償費の増額や物価高騰の影響で総事業費が98億円上振れし、422億円となることが21日、分かった。2019年に続く2度目の増額で、当初の295億円から4割超も膨れ上がることになる。

 [広域防災拠点] 大災害時に(1)傷病者の域外搬送拠点(2)消防や警察など広域支援部隊の一時集結場所(3)支援物資の輸送中継拠点-などの機能を担う。敷地面積は約17.5ヘクタール。芝生や土のグラウンドなどを整備し、平時は公園や防災教育の場として活用する。

 事業着手から10年間で完了が見込めない事業を対象に実施される公共事業再評価に向け、県が作成した説明資料で明らかになった。

 資材高や人件費高騰に伴い約22億円を増額。宮城野区岩切地区に移転する新しい貨物ターミナル駅の整備で軟弱地盤改良や雨水・排水対策といった追加工事などに約76億円が必要となった。

 現時点で150億円超と見込んでいた県負担分もさらに増える見通し。

 広域防災拠点は、東日本大震災後、物資や人員の差配が不十分だった教訓を踏まえ、13年に検討が始まった。295億円と見込んだ事業費は19年に324億円に変更された。当初、震災から10年の20年度に設定した完成時期も3度延び、32年度までずれ込んだ。

 国の社会資本整備総合交付金を活用する事業で、県の負担分については、今後精査される。県は22日、行政評価委員会に事業の妥当性を諮問し、パブリックコメント(意見公募)を実施。委員会は費用対効果などを検討し、来年1月にも答申する予定。

問われる事業の妥当性

 【解説】村井嘉浩知事が「創造的復興の最終形」と位置付ける一大プロジェクトは再び、事業費の見直しを迫られた。さらなる巨額の県費投入は確実で、村井知事は説明を尽くす責務を負うことになる。

 ロシアのウクライナ侵攻に端を発する物価高騰の影響が背景にあったとはいえ、当初計画から127億円も増えた。村井知事にとっても大きな誤算だっただろう。

 今回の増額分は、宮城野区の宮城野原に計画する広域防災拠点の整備費と、JR仙台貨物ターミナル駅を岩切地区へ移転するJR側への補償費に大きく分かれる。見直し分のうち、9割近い86億円が補償費としてJR側に支払われることになる見込みだ。

 知事は「コンサルタント会社の力を借りて信号機1機の値段から厳しい交渉を積み上げている」とかつて説明していたが、そもそもの計画の熟度が十分だったか疑問が残る。

 膨らみ続ける事業費を目の当たりにし、ある与党県議は「衝撃的な数字だ」と打ち明けた。与野党問わず、議会内には事業に対する批判が根強い。そもそも完成時期が12年も延びた。県政トップの肝いり事業の妥当性すら問われかねない。(報道部・樋渡慎弥)

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