仙台市内で店員が常駐しない「無人店舗」の新規開設が相次いでいる。キャッシュレス決済の普及や防犯システムの性能向上が、無人による運営を可能にしている。生産年齢人口の減少で人手不足が深刻な中、企業側は店舗運営コストを削減し、低価格の商品販売につなげようと知恵を絞る。(報道部・池田隆平)
「盗難被害は確認されず」
仙台市青葉区大町の「冷食屋仙台店」。広さ約30平方メートルの店内に、100種類以上の食品が入った冷凍庫が所狭しと並ぶ。昨年9月にオープンした全国チェーンのフランチャイズに加盟する無人店舗だ。
キャッシュレス決済に対応するほか、現金支払い用の箱を設けて24時間営業する。お釣りが出ないよう料金は50円単位。盗難防止のため、店内で4台の防犯カメラが稼働する。
瀬尾俊正店長(58)は「ある程度のリスクは仕方ないと思って始めたが、盗難被害は確認されていない。手軽に商品を買える無人店は、消費者に受け入れられていると感じる」と話す。
九州や北陸を中心に全国で話題の商品を取り寄せ、スーパーやコンビニと差別化を図る。売れ筋はギョーザやもつ鍋セット。2日に1回ほど補充しても売り切れることが多いという。
瀬尾店長は高齢者福祉施設運営会社の社長という顔も持つ。「従業員を雇う必要がなく、面白そうだから始めた」と出店の経緯を説明。市中心部に2号店を出すことを検討している。
「安く販売するため」
青葉区一番町には9月、「無人古着屋HOPE24H」がオープンした。広さ約26平方メートルの店内に、男性向けを中心に上着約600着を用意。24時間営業で現金会計もできる。料金は500円単位で設定した。
個人経営する沼倉力也さん(27)は、フリーマーケットアプリで古着を売買していた。7月に市内の古着屋を訪れ「価格の高さに驚き、安く販売するため無人を選んだ」と明かす。
現金の支払い箱には、大手警備会社の盗難防止システムを導入した。2台の防犯カメラで撮影した映像は、沼倉さんのスマートフォンで見られる。月の売り上げは80万円を目指す。
青葉区のエスパル仙台本館地下1階には10月、東北の土産物を中心に150種の商品を取り扱う「すまぷらストア」が開業した。支払いはキャッシュレス決済のみ。頭上に20台、レジ2カ所に1台ずつカメラを設置し、防犯対策も講じた。
営業時間は午前7時~翌午前0時。本館の営業時間外でも利用できる。運営する仙台ターミナルビル(仙台市)の担当者は「早朝、深夜の利用客も多く見られる。知名度も徐々に上がっている」と手応えを示す。