《日本一の金持ち村》「ホタテ御殿」の車庫にはフェラーリにポルシェ、コンビニにはドンペリが…!漁師たちが明かす「知られざる実態」

浜エリアの土地は争奪戦

前の記事『年収3000万円は当たり前で、移住希望者も続出!「日本一の金持ち村」ホタテ長者たちが明かす「驚きの暮らしぶり」…冬の3ヵ月間は休み、競争は存在しない、完全世襲制』では、ホタテ漁師の驚愕の収入、そして高収入を可能にした北海道の猿払村(さるふつむら)漁協独自のシステムについて紹介した。

この記事では、「ホタテ御殿」に暮らす漁師の知られざる日常生活と本音に迫る。

昨年度の同村の平均所得は約732万円。ホタテ漁のおかげで「日本でいちばんお金持ちの村」になった猿払村は、稚内市から50キロメートル離れた場所にある村だ。

日本最北端の宗谷岬からオホーツク海沿いに下っていくと、殺風景な海沿いに突如3階建ての豪奢な住宅が現れた。

さらに港から少し内陸部に入ると新築の瀟洒な邸宅が集まるエリアがあり、駐車スペースにはランドクルーザーをはじめ高級車がとまっている。漁師たちが建てた「ホタテ御殿」だ。

「ホタテ御殿」が集まる浜エリア

「浜の漁師は結婚すると実家を出て自分の家を建てます。二世帯住宅は敬遠される傾向にあります。

一番人気は港から近いエリアです。漁師は朝が早いので港に近ければ近いほど利便性が高い。このエリアは分譲が出ると抽選になります。地価は安いところで1坪500円程度。これはレアケースで、平均では1万から1万5000円です。

若い世代はしゃれた家を好み、旭川の業者にデザインを依頼するケースが多い。土地が安いとはいえ、建材費が高騰しており、倉庫などを含めると土地と上物で8000万円近くになります」(浜エリアに暮らす漁師)

自慢したら税務署が来た

今回の取材では数軒のホタテ漁師の自宅にお邪魔させてもらったが、どこも3階建ての大きな邸宅であった。だが、中は意外と一般的であり、リビングにあるテーブルやソファは高級品であったが、カラオケルームやシアタールームを備えた家はなかった。

ベテラン漁師はこう話す。

「豪華という意味では、昔のほうがすごかった。組合員が100人程度だった昭和の時代には年収1億円というホタテ漁師もいて、エレベーター付きの家もありました。

新築の家はどれもおしゃれな外観ですが、中に入れば生活感あふれたごく普通の家です。テレビの番組で自宅を紹介した漁師もいますが、その家が特別なだけであって、普通はカラオケルームなんてありません」

おしゃれな外観の家が建ち並ぶ

村で取材をしていると、多くの漁師が「ホタテ御殿」と言われることに苛立ちを見せた。

「テレビ番組で村が取り上げられると、ユーチューバーが我々の自宅を撮影しに来て、無遠慮にカメラを向けました。

勝手に自宅の映像を流されるのは腹立たしい。その昔、漁師が高収入を吹聴してしまい、税務署の調査が入ったことがありました。目をつけられたくないのが本音です。金持ち自慢して得することなんてひとつもありませんよ」(前出・ベテラン漁師)

ガレージには高級車がズラリ

猿払村ではトヨタのピックアップトラックであるハイラックスがやたら目についた。とりわけホタテ漁師らしき若者の多くは、ハイラックスに乗っている。この謎について土曜の夕方、自宅前でバーベキューをしていた漁師が明かしてくれた。

「漁師は個人事業主です。船主であれば資材などを経費として落とせますが、それ以外の乗組員は車以外に経費で落とせるものがない。要は、経費対策で車をバンバン買っているわけです。漁師は2台持ちが基本。自分の車プラス作業車です」

ホタテ漁師は皆、車好きで、中には車検を待たずに買い替える人もいるという。この漁師は続ける。

「ベンツ、BMW、アウディ、レクサス、ポルシェ、フェラーリ…。皆、高級車を持っています。ただし、見かけなかったでしょう。理由は塩害対策として車庫に入れているためです。

自宅前にとまっているのは車庫に入らない作業車や普段使いの車であり、車庫がやたらデカい家はたいてい車好きです。

車といえばエンストしたフェラーリが1週間も路上に放置されていたことがありました。札幌から業者が来るまで1週間もかかってしまったのです。あれは猿払村ならでは光景でした」

コンビニにドンペリ

村はホタテによる活況に沸き、数多くの「ホタテ長者」が誕生した。だが、彼らは「稼いでも使う場所がない」と口を揃えた。

「自分は結婚していないし、家も買っていないので基本的には自由に使えます。ただ、使い道がありません。買い物をしようにも店がない。あるのは海沿いにあるセコマ(セイコーマート)くらい。

あのセコマは北海道有数の売上を誇っていると噂されています。ある時期、ドンペリが置いてありました。これは伝説になっています。さすがに売れていませんでしたが(笑)」(若手漁師)

かつては個人商店もあったが、ほぼ閉店してしまったという。飲み屋と呼べる店は港の近くにある一軒だけだ。

村唯一の飲み屋

「ここは最近オープンしました。客はおじさんが中心ですが、若い人もいます。

決まった休みは日曜日だけ。土曜の仕事を終えると稚内まで飲みに行って、そのままホテルに泊まっています。稚内がそれなりに潤っているのは、猿払村のおかげだと言われていますよ。

旭川や札幌まで出かけることもあります。北海道の人間は飛行機を使いません。基本、車移動です。稚内は1時間、旭川は4時間、札幌は6時間。慣れているので全然余裕です」(前出・若手漁師)

若者に人気のアウトドアブランドを着込んだ、この若手漁師に「村に欲しいものは何か」と聞いてみた。

「マクドナルドとセブンイレブン。あとはドラッグストア。とはいえ、アマゾンの配達も来るので、欲しいものは手に入ります」

いまどきの若者に悩むベテラン

ホタテ漁師の一日のスケジュールは以下のようなものだ。中堅のホタテ漁師が説明する。

「漁師の一般的な生活スタイルですが、ピーク時であれば、朝3時過ぎに起床し、4時半に出航。早ければ7~8時、遅くとも正午、13時には港に戻ります。

荷揚げして、掃除して、翌日の準備をして、車で帰宅。風呂に入って仮眠、あるいは奥さんの買い物に付き合うというケースが多いですね。

夕飯は17時頃から。寝るのは21~22時くらいでしょうか。若いヤツはもっと遅いと思いますが、遊びに行く場所がないので、ケータイを見ているだけだと思います」

浜鬼志別漁港に停泊するホタテ漁船

この中堅漁師は、いまどきの若い漁師への接し方で悩んでいるという。

「祖父以上の世代が苦労した歴史があって今がある。それを伝えていかなければいけないが、若い子は難しい。彼らは話を聞いてくれないし、しかっても響かない。漁師の世界も一般企業と同じですよ。昔は怒鳴り散らす漁師もいましたが、今は少ないですね。

仕事を休むときに母親が連絡してくるなど『時代は変わったな』と思うことは多々あります。でも、こっちが時代に合わせないといけないのが現実です」

嫁はススキノで見つけてくる

漁のない冬の3ヵ月は自由だ。この時期が一番の楽しみという。前出の若手漁師が明かす。

「11月20日前後に本操業が終わります。漁船を陸に引き上げ、12月頭に精算を済ませ、その後は完全オフです。除雪車の運転手をする勤勉な人もいますが、そうしたタイプは珍しい。

札幌にマンションを持っている人も多く、冬は札幌でのんびり過ごすという人も多いですね。

休みの時期は出会いの時期でもあります。ここが嫁探し、彼女探しの勝負所です。地元には年頃の女性がいませんからね。

猿払村のホタテ漁師は、稚内、旭川、札幌…各地から嫁を連れてきます。自分のまわりのおねえさん(漁師の妻)はススキノの人が多いですね。

カネは正義です。カネがなければこんな田舎に来てくれないと思います」

つづく記事『「日本一の金持ち村」にホタテ長者が続々誕生!日本最北の漁村に嫁いだ妻たちの「本音」とは?…北海道「猿払村」が抱える「村民格差」と「危機感」』では、ホタテ漁師の妻、漁師ではない村民の「秘めた思い」に迫る。

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