平均月収35万円・43歳サラリーマン、負担拡大に悲鳴「もう、潰されてしまう…」年金減に老後不安、生涯現役確定の絶望感

日本は世界でも少子高齢化が深刻な国のひとつ。現役世代の負担は増し、潰れる寸前です。自身が高齢者になったときに、支えてくれる若者たちがいればいいのですが、それもなかなか難しそう……明るい未来を描くことが難しい、日本の現状をみていきます。

国民負担率46.8%…20年で急増のワケ

厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査』によると、日本のサラリーマン(正社員・平均年齢43.5歳)の平均給与は、月収で35.3万円。賞与も含めた年収は579.8万円です。

額面月35万円(ボーナスあり)だとすると、独身であれば手取り26.4万円ほど。既婚で子どもが1人いれば27.4万円ほどになるでしょう。

――給与から税金やら保険料やら、こんなに引かれるんだぁ

何度も目にした現実。何度でもため息がでます。

財務省が発表している租税負担率と社会保障負担率を合計した「国民負担率」は、令和5年度(見通し)で46.8%。経年でその推移をみていくと、遡ること10年前の2013年40.1%、さらに10年遡った2003年は34.1%、さらに10年遡った1993年は36.3%でした。国民負担率は80年代後半から1990年代は35%前後で推移。それが2000年代後半あたりから上昇を続け、2013年には40%台に。この4年ほどは45%を超える値で推移しています。

ちなみに国民負担率の計算式はシンプルで「(租税負担+社会保障負担)÷国民所得(個人や企業の所得)」で求められます。「国民所得の半分近く」というとすごい負担率のように思えてきますが、欧州諸国と比べると、日本の国民負担率は相対的に低いことで知られています。また海外では対国民所得比ではなく、対GDP比を用いるのが一般的。この基準でみていくと、OECD加盟国36ヵ国中、日本は22位(2020年)。やはり欧州諸国と比べると低い水準です。

このような状況から「高負担の欧州諸国よりもマシ」という声もありますが、日本はいわゆる「低負担・中福祉国家」として知られ、一方で欧州諸国は「高負担・高福祉国家」。提供されるサービスが異なるわけですから、比べてもあまり意味がありません。

それよりも「日本人の給与は30年間据え置き」という事実が大問題。給与は変わらないのに負担は増えているわけですから、「給与からこんなに天引きされんの!」という驚きは当然のことです。

負担率が上昇しているのは、やはり高齢化がひとつの要因。高齢化に対応するために消費税が増税となったり、所得税を計算する際の「給与所得控除」や「公的年金等控除」などが見直され、所得が高い会社員などの負担が増えたりなどして、負担率はぐっと上昇しました。

2040年、年金2割減は既定路線…老後不安拡大に打ち手は?

生産年齢人口(15歳~64歳)に対する65歳以上人口の比率である「高齢者扶養率」は、2022年、51.19%。世界でも2番目に高い国ではありますが、1位の「モナコ」はセレブが集まる人口4万人程度のミニ国家であり、実質、日本が世界で一番高齢者扶養率の高い国だといえます。

【世界「高齢者扶養率」上位10ヵ国】

1位「モナコ」70.36%

2位「日本」51.19%

3位「イタリア」37.87%

4位「フィンランド」37.81%

5位「ギリシャ」36.05%

6位「プエルトリコ」36.04%

7位「ポルトガル」35.82%

8位「フランス」35.42%

9位「マン島」35.36%

10位「ドイツ」35.23%

出所:世界銀行(2022年) 資料:GLOBAL NOTE

日本が世界2位、実質世界1位の高齢者扶養率となったのは2002年のこと。ただしこの時の高齢者扶養率は28.42%だったので、いかにこの20年で高齢化に伴う負担が劇的に増えたかが分かります。

――もう高齢者を支えられません、潰されてしまう

現役世代の悲鳴が聞こえてきそうな状況。ただ老後の安泰が約束されているなら、苦しい負担も乗り越えられるかもしれません。ただし前述のとおり、日本は「低負担・中福祉国家」。過度な期待はできません。

厚生労働省によると、厚生年金受給者の年金支給額は平均月14万円。65歳以上に限定すると、男性で月17万円、女性で11万円程度です。また高齢者1人の月支出は14万円程度。年金の手取り額を考えると、平均的な元会社員であれば、年金だけでなんとか生活ができそう、という水準です。

しかし年金減額は既定路線。公的年金を標準的に受給し始める65歳時点のモデル年金額(額面)が、その時点の男性現役世代の平均手取り収入(賞与込)と比較してどの位の割合かを示す「所得代替率」は、2019年時点で61.7%。この所得代替率は2040年代には50%程度になることが確実視されているのです。これは年金が2割目減りするということ。平均的なサラリーマンであっても「年金だけでは生きていけない」ということが確実、というわけです。

老後不安は、どんどん広がっていくばかり……。そこでいわれているのが「自助努力」。「自分の老後ためのお金は自分でつくりなさい」ということです。さまざまな優遇策もあり、昨今は老若男女が「資産形成」を合言葉に資産拡大を目指しています。

老後も働き続けられる環境へ…その先に待つ、最悪のシナリオ

一方で誰もが資産をつくれるとは限りません。介護資格学校「日本総合福祉アカデミー」の教室を運営する株式会社ガネットが行った『「定年後の働き方」に関する意識調査』によると、定年前のサラリーマンの4人い1人が「貯蓄がない」と回答。運用に失敗したのか、そもそも資産運用するための元手がなかったのか……理由は何であれ、定年を前にして「貯蓄ゼロ」は一大事です。

そうなると「定年後も働かないと生きていけない」ということになりますが、幸いなことに、70歳までの就業機会の確保が企業の努力義務になったり、在職老齢年金の支給停止基準が引き上げられたりと、老後も安心して働ける環境はどんどん整備されていっています。

――その気になれば、一生働くことができる

という喜びの声が聞かれる一方で、多くの高齢者が給与収入を得られるようになれば、「年金支給年齢の引き上げ」や「年金支給額の引き下げ」がしやすくなる、と指摘する専門家も。そうなれば多くの人は「老後、働きたい人は働く」ではなく、多くの人が「働かないと生活できないから働く」という世の中になるでしょう。

内閣府『令和3年版 高齢社会白書』では、国際比較調査にみる日本の高齢者の生活と意識の特徴について記されています。高齢者が就労を希望する理由として「収入が欲しいから」を挙げた割合は、「日本」が51.0%だったのに対し、「アメリカ」は32.2%、「ドイツ」35.5%、「スウェーデン」25.1%。現時点でも日本では「働かないと生活できない」という高齢者が多く、その割合は、今後も増えていくことが確実だといえるでしょう。

老後も働かないと生きていけない……なんとも絶望的な未来しか描くことができない日本で一縷の望みをあげるならば、「老後に働かなくてもいいほど資産形成が上手くいく」ことのみ。自身の幸運を祈るしか方法はありません。

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