「99.9%変色しない」カットリンゴが大人気 青森のアップルファクトリージャパンが累計1億パック販売

カットリンゴの生産・販売で存在感を放つ企業が青森県にある。アップルファクトリージャパン(平川市)。熟練従業員らによる高い加工技術と変色を防ぐ溶液の開発で、全国に先駆けビジネスモデルを確立。牛丼チェーン店やコンビニからの大量発注に応える。
(青森総局・伊藤卓哉)

牛丼チェーンやコンビニから大量発注

 ラインを流れるリンゴが次々と均一にカットされていく。リンゴに刃を当て芯を抜きながら放射状に切る分割機は5分割から12分割までの8種類。従業員は大きさや形を見極め、瞬時に使い分ける。

 「日本は均一な商品が求められる」と語るのは大湯知己社長(64)。関連工場では約5000万円をかけて自動分割機を導入したこともあった。だが、機械任せではリンゴの形状に合った繊細なカットが難しく、検品の手間もかかる。皮むきや梱包(こんぽう)などは自動化しても、カットは熟練の技を生かしている。

一度は挫折

 リンゴ農家の大湯社長が6次産業化を目指し、カットリンゴの生産を始めたのは1999年。周辺農家に声をかけ、有限会社を設立した。近くの道の駅にある小さな加工場で製造を始めたが、褐変(変色)を防ぐことができずに事業が成り立たず、1年半で解散した。

 200万円の借金が残ったが、諦めずに溶液の研究に日夜取り組んだ。学術論文を参考にするなどして、食塩やビタミンCなどを独自の比率で配合。「99・9%変色しない」(大湯社長)という溶液の開発に成功した。県内の学校給食などから注文が次第に入るようになった。

地下鉄駅に自販機設置

 転機は2008年に訪れた。全国に販売網を持つ青果物商社エム・ヴイ・エム商事(神戸市)の幹部と意気投合。共同出資でアップルファクトリージャパンを設立した。1億6000万円かけて新工場などを整備し、増産体制を整えた。

 11年には、東京メトロの霞ケ関駅構内に日本初のカットリンゴ自動販売機を設置。爆発的にヒットし、小売店からの引き合いも強くなった。近年は国内トップクラスの年間700万パックを生産し、累計販売数は1億パックを突破した。青森工場の売上高は昨年度、3億円を超えた。

 カットリンゴは、手軽さから若年層を中心に人気を集める。農林水産省の調査(22年度)によると、「カットフルーツ・冷凍フルーツ」の形態で果物を食べる割合は全世代では9・5%に過ぎないが、20代に限れば約20%に高まる。

 大湯社長は「稼げる農業に若者が挑戦できる環境をつくっていきたい。求められる限り、よりいい商品を探求していく」と話す。

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